第23話
————…
「きり」
「ぐぇ」
心未の依頼書を手に、席に戻った私は途中だった仕事は手につかないまま、頭の中で頭を抱えていた。
そこに、頭上から加減された体重がのしかかる。
「この良い匂いは知…花山院さんデスネ」
「鼻の利く愛犬だなァ」
よしよしと髪をボサボサにされ始めたがそれどころではない私は黙ってボサボサにされた。
「無視? 上等」
流石の花山院——
「んー」
口ごもり、男嫌い克服の件について考え続ける。
私が女である限り男の人に協力してもらわなきゃならない。
まずちら、と前を見る。今は空席の一つ後輩・
次、その隣の同期・ぎっちゃんの席。ぎっちゃんは〜〜どうだろう。こういう事は彼女がいない男の人の方がいい気がするから、だめかな。
「おい」
「ぅわ」
突然顔面偏差値キャパオーバーが目の前に現れて驚く。
「慣れろよ」
顔面偏差値キャパオーバーが苛ついたように眉を顰め、平々凡々の私は知愛くん…は善くんの友だちだしな〜と顔を顰めた。
「…あ? 何か知らねぇけど今自分の男使えるか考えた?」
「声に出てました!?」
「……」
眉の皺はますます深まる。
慌てた視界の端に次の候補者・百目鬼さんが現れ再び考えに耽った結果「いや百目鬼さんじゃ上過ぎるな。打ち解けやすそうではあるけど」と口端から零れた。
「前坂ーどうでもいいけどおまえ全部零れてるぞ」
知愛くんに「そこ上過ぎる俺の席」と声を掛けた百目鬼さん。「フリーアドレス」と私から視線を逸らさない怖い知愛くんに一蹴されている。
「それは。花山院が勝手に決めた事な。おまえの席、前坂の逆隣なだけだろ移動しろ」
「あ、居た どーめきさ〜ん。俺のペン持ってってません?」
「!」
そこで向かい側から聞こえてきた忘れていた声に耳が動く。それを見逃すわけがない知愛くんが短く「桐」と呼んだけど既に私の頭の中はいつか善くんに『知らない人』と説明された天野さんに白羽の矢を立てていた。
「何? 前坂ちゃん」
立ち上がった私を見つけてあまく小首を傾げる天野さん。
「あの、お願いが—」と言い掛けるとこちら側に回ってきてくれて、ずっと握りしめていた依頼書を覗き込みざっと概要を理解した様子。
「あ〜これ、善のあれだ?」
やはり、善くんと天野さんは知り合いなのか?
分からない私を通り越して何故か一人座ったままの知愛くんに上げた口角で訊いている。
「……」
知愛くんはじっと私を見たまま黙った。
「いーよ♡ 俺が協力しよう」
その応えに、知愛くんは私に溜息を吐いた。
「おまえあんまあれに手出すな。
拗らせた人間ほどマズいもんはねーよ」
「知愛くんが言うと説得力あるね」
依頼書を手にした天野さんがスーツのポケットに片手を突っ込んで笑うと、知愛くんはやっと天野さんを見上げた。
「
▽ ▽ ▽
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