第9話 最後の空③
「ぐっ!!」
邪神から振り下ろされた剣を魔力で作った剣で防ごうとする。
だが、●●●の魂がなくなったことで加減をしなくなったその一撃を防ぐことができず、あっさりと折れてしまう。
そのまま振り下ろされた剣をギリギリ回避できた。だが、その一撃の衝撃で吹き飛ばされる。
周囲で様子見をしていたゴブリンに至っては存在を維持できなくなり、消滅していた。
普段の特訓でどれだけ手加減されていたのかを改めて実感した。だが、それと同時に
「やっぱりそうか」
●●●の魂がなくなったことで型のような鋭いものではなくなり、幼い子供の癇癪のように力任せで暴れているだけのようだ。
そのおかげで攻撃は躱せている。しかし、近づけないためこちらから攻撃することができない。
「ハア!!」
木を盾にして邪神の攻撃を防ぎ、そのまま斬りかかる。だが、それは三本の左手に同時に殴りかかられたことで中断せざるを得なくなり、剣を背後の木に刺して足場にし、それを蹴ることで回避する。
くそ、躱せるのに攻撃が当てられない。
こちらには決定打を与えられる隙がない。だが、邪神の攻撃はさらに過激なものになっていく。
慢心でもなく、ただの事実として、いまの邪神と俺とでは俺の方が技術はある。だが、ステータスの差。たったそれだけで戦いは一方的なものにされる。
「ハハ、マジかよ」
邪神の左手すべてに魔法陣が生成される。そして、その魔法陣から瘴気の剣を創り出すと握り締める。
「これで、左側のリーチも伸びたか」
「グギャオォォォォ!!」
左手の三本の剣を適当に振り回す。その剣に周囲の木や近くにいたゴブリンが斬られていく。その過程で自分自身も斬っているが、斬られて瘴気に戻ったゴブリンだったものを吸収して再生する。
「ほんと、なんでもありだな」
振り回される剣の嵐を回避する。
やっと目が慣れてきた。身体の動かし方も慣れてきた。
そうして、魔眼の力で自分のステータスを確認し、余ってるステータスポイントを振り分ける。
まだ千以上も残っているが、いまのステータスを身体に慣れさせる。
攻撃を躱し、振り下ろされた剣をそらし、斬りかかる。
身体が慣れたらステータスを振り分ける。
何度も繰り返す。ステータスが0になるまで何度も何度も繰り返す。
邪神が瘴気から生み出したゴブリンをすぐに倒してレベルを上げ、ポイントを増やす。
途中でなにかに気付いたのか瘴気がゴブリンを作ろうとすると剣の斬撃で吹き飛ばし、瘴気に戻してくるようになった。
もう、レベルアップはできなくなった。
適当に剣を振り回すのは変わらないが、俺の動きを見て効率的な身体の動かし方を学んできた。
無傷での回避がしにくくなった。
瘴気を凝縮し、弾丸のように撃つことができるようになった。
距離をとって様子見することができなくなった。
どんどん俺のできる選択肢が減らされていく。
魂がなくなったことで攻撃が大雑把になっていたが、戦闘センスは受け継いでいるようだ。
だんだんと追い詰められ、ついには距離を取ることもしにくくなった。
そして、振り下ろされた斬撃を回避するが、その衝撃で吹き飛ばされる。
残りのポイントは0。これ以上ステータスを上げることはできない。
すでに戦闘が始まってから数時間は経過している。なるべく体力の消耗が少なくなるようにだましだまし行動していたが、さすがに限界になってきた。
だが、最後に上昇させたステータスに身体が慣れてきた。俺は、腰に刺したままにしていた●●●から受け取ったままの瘴気の剣を抜く。そして、邪神に向かって走り、その速度を残したまま回転しながら斬りかかる。
「これで、終わりだ!!」
邪神が左腕の剣で斬りかかる。だが、その腕ごと斬って回避する。あと少しで攻撃が当たる。そこまできた時
右腕の剣が振り下ろされる。
そして、瘴気の剣が砕かれる。
だが、剣が折れたところですでに空中にいる俺は動きを止めることができなかった。
振り下ろした右腕がそのまま俺に向かってくる。
これで終わりだ。
「・・・『デュランダル』」
そう呟くと、俺の右手に刀身が赤い剣が現れる。
そして、そのままの勢いで振り下ろされた右腕に斬りかかる。
それでも邪神は勝ちを確信しているのかニヤけたような顔を見せる。
ああそうだ。これで終わりだよ。やけっぱちの一撃だ。
・・・そう思った時点でオマエの負けだ。
アイツの剣が、アイツの人生が、アイツの心の強さが
「抜け殻なんかに、負けねぇぇぇぇ!!」
そして
斬り落とした。
「グオ!?」
「届けぇぇぇぇぇぇぇ!!」
勢いを殺さず、そのまま邪神を真っ二つにする。
そして、そのまま邪神は瘴気となり、そのまま消滅した。
そして、邪神が消滅した場所を中心にして、森の瘴気が消えていく。
森の中なのに近くのゴブリンたちが消えていく。
それを見て、確信する。
「未練を、倒したぞ」
そのまま俺は倒れ込み、意識を失った。
その手に熱を帯びた赤い剣を握りしめたまま。
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