第8話 最後の空②

1000文字にも達していないとても短い話ですが、キリがよかったのでいったんここで。

前の話の最後に付けることも考えましたが、これは違うなと思い、分けることにしました。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あの後、いつのまにか俺は眠っていたらしい。

目を覚ますと、邪神が何かを焚き火で焼いていた。


『起きたか。ちょうどいい。そろそろ魚が焼ける。食っておけ』

「・・・」


聞き覚えがある。これは、あの時の。なら。


「その魚、どこで」


そう返すと、邪神はどこか嬉しさを隠すように、なるべく、あの日と同じ無機質な声で続ける。


『ここは元々森だった。この森の中心であるこの場所の近くには川があり、そこには外の川から川魚が迷い込んでくる。それを獲った』

「・・・邪神も、食べたりするんだな」

『食べない。必要がないからな。これはオマエのために獲ったものだ』


そこで会話が止まる。あのときと違い、俺はエナジーベリーを食べていないからだ。


邪神からあのときと同じように味付けのされていない串焼きにされた魚を受け取る。


『腹が減っているだろ。そんな状態ではまともに剣を使えない。だから、無理でも食べろ。塩なんてものはここにはないから素材そのままの味だ。これを理解して食べろ


「・・・わかった」


そう言ってひとくち食べる。

あのときと違って味覚は正常になっている。

だから、あのときとは異なる味がする。


「なんだよ。ちゃんと塩が効いてるじゃないか」

『・・・そうか。なら、私としては嬉しいよ』


渡される魚を食べ続ける。

食べて食べて食べ続ける。

そして、完食した。


流れる涙を腕で拭う。吐きそうになる感情を抑え込む。

たったこれだけのことで疲れたのか、意識が朦朧とする。


それでも無理やり立ち上がる。邪神が右腕の剣を俺に向ける。

俺は、それに触れる。目を瞑って『清浄の心臓』を発動させる。


そして、目を開く。外の時間ではコンマ一秒にも満たない時間しか流れていない。だが、俺はたしかにアイツとの・・・●●●との別れを済ませた。意思を受け継いだ。


だから、あとは


『グォォォォォォォ!!!!!!!』


邪神これを、●●●の残した心残りを消し去るだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る