第4話 出会い③

目が覚める。目の前には木の根みたいなものの皮を剥いている邪神がいる。その目の前には鍋がある。なんでこんな森に鍋があるのか疑問だが、たぶんこの邪神に挑んだ者が持っていたのだろう。


『いまは朝だと思う?夜だと思う?』


視界は暗い。もとからあまり見えない左眼だけでなく右眼もよく見えない。だが、前に目が覚めた時と比べてより暗く感じる。ということは


「夜、か?」

『そうだな。だがもう少ししたら夜が明ける。今日から特訓を始めるぞ』

「特訓・・・。視力に問題があるけど大丈夫なのか?」


邪神は左手の1本を俺に向ける。いまの俺でもわかるほどの発光が起き、反射的に目を瞑る。次に目を開くとさっきまでとなにかが変わった気がする。


『これでいいか。早く飯を食べろ。いまは味はわからんだろうから流し込みやすい汁物にした。できれば固形の方が腹持ちもいいのだが、しかたがない。ほら、受け取れ』

「え?あ、ああ」


邪神からスープが入った器を受け取る。穀物のようなものがドロっと溶けている粥のようなものだった。・・・ってあれ?


「見えてる?元々視力が悪かった左眼も、普通に見えてる?」

『見えてるわけではない。テレパシーの応用で私が感じていることをオマエも感じれるようにした。正確にはオマエが無意識に感じようとした情報を私の感じている情報から抽出して共有している。という感じだがな』


コイツ何者だよ。たぶん教会にいるやつにもできないだろ。そんなこと。


『これで、特訓については大丈夫になっただろう?』

「ああ、そうだな」


お椀に入っている粥を口にする。


・・・まずい。


その言葉と一緒に飲み込み、流し込んで完食する。食事というより作業だな。いまのところ。


俺が食べ終えたのを確認すると邪神は空間の裂け目を作り出してその中に鍋を入れた。・・・空間魔法まで使えるのかよ。


『移動するぞ』


そう言われ、邪神について行く。俺が全力で走る程度の速度で移動しているため喰らいつくように着いていく。この森で最弱の存在である俺は邪神から離れればその瞬間殺される。


おそらく、邪神には俺を使ったなんらかの目的がある。だから殺されそうな時は助けてくれると思う。

だが、それだと俺は強くなれない。だから喰らいつく。麻薬のようなもののおかげとはいえ増えた体力により目的地であろう開けた場所まで着いていけた。


それでも、体力が限界になっていたため座り込んでいると、目の前にあの時の剣が再び作り出される。それを握ると力いっぱい振り上げる。すると、あの時とまったく同じ軌道で、同じ力で邪神が右腕を振り下ろしており、今度はそれを受け止めることができた。


『大丈夫みたいだな。少し休憩して息を整えろ。そうしたら始める』


どうやら、いまのが邪神基準での特訓の最低ラインらしい。もし、またいまのを受け止めることができなければまた後日ということになっていたのだろう。


なんとか息を整え、立ち上がる。そして、邪神に向けて剣を向ける。


「もう大丈夫だ。始めてくれ」

『いいだろう』


そうして特訓が始まった。


最初は筋トレだった。ステータスはたしかにレベルアップで上がる。だが、レベルアップと比べると効果は低いが、他の方法でもステータスを上昇させることはできるらしい。


いまの俺はエナジーベリーにより体力と魔力が、魔物から逃げ回っていたことで敏捷は上昇しているらしい。

そんな偏ったものだと今後支障が起こるからと力、知識、耐久、器用のステータスを上げることになった。


筋トレはちょうど良く鍛えられるらしい。

筋トレにより筋肉を付けることで力と耐久を、数字や魔法などの学習を行うことで知識を、筋トレ中にそれを並行して行うことで器用を上げているらしい。


・・・なにも入ってこない。器用のステータスが低いのか筋トレに集中すると邪神の話を聞き逃して質問に答えることができず、邪神の授業に集中すると集中が途切れてしまい、止まってしまう。


授業を終えたのか邪神から終了を告げられる。初日にしてはできていた方らしい。


本来ならこの後に走り込みもする予定だったらしいが、敏捷のステータスが偏って上がっているため、他のステータスが追いつくまでは省略するらしい。ステータスを下げないために寝床とこの訓練場所の往復は走るみたいだが。


そのあとは粥を流し込み、実技訓練を行った。


前半と後半に分け、前半は邪神が俺に右腕で斬りかかり、それを防ぐということを、後半はその反対のことを行なった。


その両方が終わると実技訓練の良かったところと悪かったところを伝えられる。危険な時は一時中断して注意されていたため、助言程度のものではあったが。


その後、再び寝床までの移動を開始する。特訓で疲れていたため何度か置いていかれそうになったが、なんとか着いていけた。


粥を流し込み、就寝する時に初めのうちは特訓は一日置きにすることを伝えられた。

疲労が溜まっている時にしても意味がないから一日使って疲労をなくせということだった。


そうして、今日が終わる。

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