第5話 真実①

あれからニ年もの年月が経った。


時間は邪神が自分のものだという時計を俺に渡したため知っている。

渡されたのはステータスが追いついたタイミングで、持っている者の魔力を動力としているため魔力を消費して上昇させるために使っている。


これをもらった頃に五感が戻っていたため半年は経ったものとして数えていたから正確には違うかもしれないが。


感覚が戻ったことを伝えると特訓の内容は厳しくなった。


それからさらに半年経った頃、森の魔物と戦うことになった。


技術は鍛えられ、ステータスも上昇していたとはいえ最初の頃は歯が立たず、離脱したり邪神に助けられたりもした。


二ヶ月目になってようやくダメージが入るようになり、それからさらに半年経った頃にようやくタイマンなら倒せるくらいにはなった。(戦闘時間が長いため他の魔物に見つかって乱入され、離脱せざるを得なくなったため倒せていない)


そして、ようやく


「はあ!!」

「グギィィィィ、ギャァァァァァァ!!」


ようやく、ゴブリンを倒した。


いままでゴブリンを倒すことはできていなかったが、戦ったことでステータスは1から3と微小ずつだが上昇し、一対一ならようやく倒せるくらいにはなったらしい。

そして、ゴブリンを倒したことで、膨大な経験値が入ってきて、それを聞いた。


『規定経験値取得。存在レベルが上昇しました。鑑定により確認してください』


人のものとは思えない無感情な方が聞こえた。

周囲を警戒しながら左眼に魔力を集中させる。

エナジーベリーの副作用で低下していた視力が回復した際に、もともと視力が悪かった左眼が周囲の瘴気を取り込みながら回復していたことで魔眼になっていた。

まあ、能力は自分のステータスだけを確認できるのと周囲の気配をうっすらと感じ取るだけというそこまで強いものではないが。


「レベルは、二十まで上がってる。さっきまで1だったのに。ステータスは変化しないのか。いや、たしかポイントを振り分けるんだったな。ポイントは・・・レベルが一上がるごとに十も貰えるのか。まあ、急に上げても身体がついていかないだろうし」


とりあえず、全部に5ずつ振り分けるか。残りは慣らしながらだな。と思っている時だった。突然、俺の周囲が光に包まれる。

反射的に目を瞑り、光が弱まってくると目を開いた。すると、どこを見てもなにもない白い部屋のようなところに俺は立っていた。


「ここは、どこだ?」

「ここは、わたしの部屋だよ」


いつのまにか目の前に女の人が立っていた。

常に色が変化している虹色の髪。同じような虹色の瞳。慈愛に満ちた大きな胸。くびれた腰。身に纏っているのは白い法衣。そして感じる神々しさ。誰だ?こんなのまるで


「女神、ですよ?」


!?なんで、考えていることが


「ふふ。わかりますよ。神様にかくしごとはできません」


自分の唇に指を当て、ウインクしながらそう言った。

そして、ゆっくりと俺を抱きしめた。なぜか、争うことができなかった。

神様は俺の頭を撫でながらゆっくりと、語りかけるように話しかけてきた。


「よく、ここまで来ました。神器がなく、平凡な人生を歩むこともできたはずなのに。それでもアナタは諦めずにレベルを上げました。それまでの過程を知る術が私にはありませんのでどのような苦労をしたのかはわかりませんが、ここに来たということはアナタは道を外さず、自分の意思で努力をしたということです。誇りなさい」


それを聞き、俺は神様の抱擁を解いて距離を取る。

コイツ、なに言ってんだ。言っていることがわからない。


「平凡な人生を歩む?なに言ってるんだ!!そんなこと、できるはずがないだろ!!」

「え?え?ど、どうしたのですか?わたし、なにか変なことを言いましたか?」


目の前で神があたふたと慌てる。

だが、そんなことはどうでもいい。


「神器がない。たったそれだけで人間として扱われなくなる。そんな世界に神であるアンタがしたんだろ!!」

「え?なんで神器がないそんなことでそうなるんですか?だって、神器がなくても生きてはいけるはずです。武器が欲しいなら武器を作り、道具が欲しいなら道具を作る。それは知能あるアナタ達ならできるはずの当たり前のことのはずですよ?」

「知らねぇよ!!だがな、それが普通なんだよ!!神器が貰えない者は神から見放された背信者、異端者だとな。なのに」

「え?だからなんでそんなことになっているんですか?」


目の前の神は本当に俺が言っていることがわからないかのように動揺している。そして、それを聞いた。


「だって、神器は寿命を伸ばすだけの器ですよ?」

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