第21話 彼と私の恋電車 彼視点①

俺が彼女に出会ったのは高校3年の時。春、偶然彼女を見かけたのが始まり。


彼女は近隣高校の1年生で、新品の制服や持ち物で初々しかった。

まだ中学生の幼さがあり、当時高3である俺の|【恋愛対象=性の対象】には当てはまることはなかった。


ただ…純粋な感じで目を引いた。

『可愛いこが入学したな』って思った…それは他の奴等も同じ。

俺のまわりでは、ちょっとした話題になった。まぁ、最初の1ヶ月間だけだが。


気が付くと、同じ電車に乗り合わす。多分、彼女も部活を始めたんだろうな。

俺の朝練時間と同じ時間帯に電車に乗るんだから。…関係ないけど。


俺は混雑する電車に毎日乗っていた。ウォークマンをガンガンにかけて、自分の世界に入り込む。

時々視線を周囲に向けたりして。


彼女は気付いていないけど、いつも近い場所に俺はいた。対象にはならないけど、目の保養にはなるから。


そして気になった事があった。

気のせいかもしれなくて、そもそも俺が首を突っ込むとこじゃないきがして…とりあえず様子を伺ってた。

彼女も多分、同じだったんじゃなかろうか。


ただ、ある日あからさまに違ったんだ。


顔を赤らめて、瞳を潤ます彼女。ピクリと反応する。俺はその表情に心当たりがあった。

女が快楽に反応した時。そして不安な時。


視線を落とすと、中年男が彼女のスカートの中に手を入れていた。

明らかに痴漢だ。しかもかなり、濃いめの。


彼女は何も言えずに震えている。

やっぱり、今までのも痴漢だったんだろうな。

何も反応しないからエスカレートしたんだろう。


このままだと、更にエスカレートしそうな気がしたのと…初めて見た、彼女の性的な表情。

俺はその瞬間に…彼女を女と意識した。


本当は最初から、恋してたのかもしれない。

あの表情をさせるのは俺でありたい。

そう思った。


無意識に男の手をつかみ、彼女を助けた。

彼女はその時、初めて俺を知っただろう。初めて目が合ったから。


話しかけたくても、それは出来ない…理性との葛藤だから。


話しかけて交流をもてば、更なる交流を求めたくなる。まだ汚れていないだろう彼女に、そんな感情を持つのは罪なような気がした。


だから、毎日…彼女の隣でただ痴漢から遠ざける為に立つのみ。

話しかけるわけでもなく。ただ、そこにいただけ。


たまに、帰りも見かけたりする。その時に彼女の名前が【ヒナ】だと知った。


正直、限界だった。

近くで彼女を感じれば、触れたくなる。

艶やかな唇、白いキレイな肌、長い睫毛、甘いソープの匂い。


触れたい…犯したい。

甘い声と恍惚の表情を味わいたい。


そう思うようになってしまった自分は危険だと感じ…彼女と関わらない選択をした。







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