第19話 彼と私の恋電車 運命のヒト⑤

「ッ…あっ」

「俺がダメな理由を教えてよ」


彼の手が私の胸を刺激してきた。


「理由…なんて…」


溺れて重い女になりそうで不安だからだよ!なんて…既に重い気がして言いたくない。


それに…。


片方の手が下におりてくる。そしてズボンの上から下半身に触れてきた。

気持ちとは裏腹に体は期待しているのがわかる。


「…陽菜は、抵抗しないよな?…いつも」

「え?」

「嫌ならもっと、抵抗しろよ」


そう言われると…確かにそうだ。気持ちが揺れているせいで本気になっていない。

昔は…諦めていたんだよな…自分では何も出来ないと思って。

今の私なら…?私は逃げ出そうと、体を捩り立ち上がろうとした。

だけど…腕を掴まれ、逆に押し倒されてしまう。


「え?ズルい…っ!抵抗しようとしてるのに!」

「ズルくない。俺は陽菜が欲しいんだから、当たり前だろ?それ以上にもがいたら?」


そうは言われても。


「こんなの、ヤダ。そんなふうに求められても嬉しくない!体目当てにしか思えないもん!」


普通の恋愛がしたいんだから。こんなのもう、イヤなんだよ。


「…ゴメン…確かにそうだよな…」


我に返った彼は私から体を離した。距離をとって、私に背を向ける。


「俺もやっぱり、アイツラとかわんねーな」


(あいつら?この前のナンパ君達の事?)


「なんの為に…」


ボソリと呟く彼。とりあえず、私は床に散らばってしまったアルバムを手にした。

帰るにしても片付けなきゃと思ったから。


高校卒業アルバム…懐かしい制服。

もしかしたら…ここに王子様がいるかもしれない。真崎さんの年齢と同じぐらいのハズだから。


「…」


襲われる心配は大丈夫そうだと思えば、興味心も出てしまう。そういう空気ではないのに。

颯爽に帰るべきなのに、ここら辺が危機感無いって事なんだろうな。


パラパラと捲ってしまった卒業アルバムに、私はそこから彼を見つける。

トップにあった集団写真に懐かしい顔を見つけた。時々、電車で見かけた人達…やっぱり同じ学年だったんだ。

それなら、彼が王子様の事を知ってる可能性もある。


私は集団の中で、端に写る王子様を見つけた。


「いた…」


そして、思わず彼を見てしまう。


「え?」


初めてマジマジと見た王子。いつもチラリと盗み見するだけだったから改めて見た王子の顔。


私は思わず、クラスごとの個人写真を確認する。


「真崎…優也」


王子の写真の下に書かれた名前。彼の名前が、そこにはあった。


「真崎さん」


私は反射的に彼の耳朶を引っ張った。


「痛っ!な、何?」


思わず固まってしまった。

だって…右耳朶に…ホクロがあったから。






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