第13話 彼と私の恋電車 疑惑⑤
駅前に待ち合わせ時間の5分前に到着する。
時間には正確な方なんだけど…美樹の方がいつも到着は早い。
既にもう来ていて、スマホを触っていた。多分、大翔くんと連絡を取っているんだろうな。
実際に私を見つけると、すぐに待ち合わせ場所に移動した。
この前と同じ駅。
この時間帯なら、電車も混んでいないから大丈夫。そこら辺、美樹達も考慮してくれるんだよね…優しいから。
そもそも、この駅は大翔くんの職場の近くなんだよね。
しかし…。
この駅は…ちょっと…警戒してしまう大丈夫だとは思うけど…。
(また会いませんように)
美樹に悟られない様に周囲を確認して進む。駅から近い場所での待ち合わせで良かった。
居酒屋に入ると、まだ大翔くん達は来ていなかった。私と美樹はカウンターでとりあえず、先に始める。偶然を装うんだからと言うことで。
今日はさすがに飲みすぎない様に気を付けなきゃ。
注文して最初の一杯を飲み始めるとほぼ同時に大翔くん達が来店した。思いのほか早い。まだ、心の準備出来てなかったんだけどなぁ…。
「あれ?美樹?」
「あ、大翔」
何かワザとらしい…内心、苦笑い。
「なんだ、ココで飲んでたんだ?」
「うん」
「そっか偶然だねぇ」
「そちらは?」
美樹はヒョイと大翔くんの隣にいた人を見る私もそちらに視線を向けた。
「あ、コイツは同期でマーケティング部門の
私と美樹、2人同時にペコリと会釈する。
何だろう。絶対的な安心感?
村上さんは見た目からも人が好さそうな雰囲気が滲み出ていた。容姿的には可もなく不可もなく。正直、インパクトに欠ける。
多分だけど紹介されていないと私には印象に残らないと思う…申し訳ないのだけど。
爽やかは爽やかだけど…生粋の草食系だろうな。大翔くんは話を聞く限りロールキャベツ系だし。
(あの人は…大翔くんと同じ…かな。見た目は草食系だったもの)
「初めまして」
照れ臭そうに挨拶をしてくる村上さん。何か初々しいんだけど。今まで、この手のタイプの人と付き合った事なかったし。
どちらかと言うと…肉食系男子が多かったから。
「良かったら、一緒に飲みませんか?」
美樹が村上さんに声をかける。
「お、それ良いねぇ」
それに大翔くんが乗っかる。本当に…ワザとらしいなぁ。
「とりあえず、そっちの席に移動するか」
カウンター席からボックス席に移動する。
女子対男子で、まるで合コンだな。奥に座る私の前が村上さんだ。
男子組のお酒が来ると、乾杯をして話し出す。
だけど…何を話したら良いのやら。ひたすら美樹と大翔くんが話題を作る。お互いの情報を引き出すための話題。
「村上さんはマーケティングなんですか?」
「ええ、自分はあまり営業には向いていないんですよね。ひたすら社内でデータ収集するのにパソコンに向かってますかね…」
「そうなんですか」
正直、広告代理店の仕事はわからない。
自分のところの職場でもいまいち把握しきれていないもの。
ただ今回はウチの旅行会社のあるプランを、大翔くん勤める広告代理店が取り扱ってくれるって話。
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