第11話 彼と私の恋電車 疑惑③
「そういうことを、してるから恋愛出来ないんだよ!もう、ダメだからね!」
「は、い…」
ごもっともです。私だって恋愛したいんですから。
だけどね、1年の中でそれをしたのは昨日だけ。いつもの私なら、その日に出会った人となんてしないから。
どんなダメな関係であっても、恋愛はしてた。知り合って、段階重ねて一応付き合ったし。
私だって驚きのケースなんだよ。
「お見合いでも、しようかな…」
「お見合い?」
「婚活…してみる?」
もう、そうしないと出会いだって無さそう。社内恋愛は無理。私の周囲は、皆さん既婚者が多く独身者は結婚向きの人じゃない人が多いし。
「婚活の前にさ…大翔に紹介してもらえば?アイツ営業だし、顔広いし。友達も多いよ?」
「うーん…」
「友達繋がりなら、少しはマトモな人と出会えるんじゃない?」
「そうかな?」
次に付き合う人は、結婚を意識できる人が良い。無駄な時間は使いたくないから。
「一応、聞くだけ聞いてみようか?」
「…一応、じゃあ…」
あまり乗り気はしないけど。大翔くんを信用してみようかな。
あぁ、でも…何かが悩ませる。本当に良いのかな…。人任せの恋愛なんて。私は…愛されたい願望が強いのに。
(ドキン…)
一瞬で体が火照る。脳裏に浮かんだ昨夜の情事。激しく熱い夜。あの瞬間は何故か愛されている錯覚がした。
(ヤバい…忘れなきゃダメな事なのに)
「早急にお願いします」
忘れる為には、新しい男が良い。ちゃんと恋愛しなきゃ。
「了解」
***
美樹とのやりとりから2日。大翔くんがウチの会社に営業で来ていた。
打ち合わせが終わり、自分の職場に戻る時に偶然出くわす。
「美樹から頼まれたやつだけど」
「ゴメンね、無理なら…」
「いや、1人紹介できるヤツがいるからさ。お見合い形式的な紹介がいい?」
「え、やだ。かしこまるのって…」
「だろうな。じゃあさ、今日の夜時間ある?そいつを飲みに誘うからさ、美樹と来いよ。バッタリ会いました的な感じで」
「美樹、今日平気なの?」
「平気だと思う。連絡しとくし、美樹に指示しとく。また、あとでな」
颯爽とその場を去る大翔くん。爽やかで、優しい人。凄く良い人で、女子の人気が高い。
正直、美樹が羨ましいな…そんな人と両思いになれてって思う時もある。
「瀬口さん、小谷さんと知り合いですか?」
ほら。ウチの女の子達も大翔くんに興味持ってる。笑顔を振り撒いてるからな。さすが、営業。
「大学時代からの知り合いなんです。親友の婚約者なんで」
「え?小谷さんって結婚されるんですか!?」
「すると思いますけど」
ショックを受けてる女子社員。狙ってたのかな?罪な男だなぁ…大翔くんって。美樹も心配が絶えないだろうな。
私は…嫌いではないけど、最初から2人を見てきてるから特に恋愛感情はなかった。
だって、大翔くんの美樹に対する溺愛っぷり。
あれを見たら、誰も入る隙はないと思うはず。
だから、元より恋愛感情には発展しなかった。モチロン、これからもない。
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