第9話 彼と私の恋電車 疑惑①
家に帰宅すると、今回の出来事の痕跡を消すかの様にシャワーを浴びた。
鏡を見て、溜め息を漏らす。思い出しただけで、また彼を欲しくなる。
先ほどまで激しく求められた体、忘れられない温もりと感覚。
体の相性って、こういう事だろうか?
何度も快楽で満たされ、意識が飛びそうになった。こんなの初めて。
色んな体位で繋がり、初めて自分からも動いた。いつもマグロ状態だった私が。
望まれない限り奉仕なんてしなかった私が夢中になるほど…。それほど、彼とは貪欲になれた。
壊されてしまいたい。滅茶苦茶にされたい。激しく求められたい。
そんな願望が心を支配したんだ。
「…とりあえず…仮眠して…午前中のうちに病院…かな」
今日は日曜日だから、クリニックも午前中しかやってないはず。明日に延ばすのは危険だし。今日のうちに行かなきゃダメだよね。
アフターピル…だっけ?避妊に失敗した時とかに処方されるやつ。
今までに経験はないけど、友達から話は聞いたことあった。
まさか、自分が必要になるなんて我ながら驚きだ。しかも相手は恋人じゃなく、一夜限定の相手なんだから。
(そもそも私なんて、名前さえも聞かれてないし)
そんな相手の子供を妊娠するかもしれない。
お互いに夢中に求め過ぎて…理性のタガが外れていた。後半は何となく繋がりたい感覚で繋がったりしていたものだから、避妊もしてなかった。繋がったらしたくなるの、わかってるのに。
だから…私の中には彼が残っている。
(結局…いっぱい…しちゃったもんな…)
『妊娠したら…知らせて』
そう言われたけど…もう会うつもりはない。会ったらまた、求めてしまいそうだから。
(結局、耳朶も確認出来なかったし)
例えそうだったとしても、何かが違う気がする。
純粋な恋を欲望で汚してしまった再会は…素直に喜べるものじゃない。
それに、彼は王子様の行動に反してる。私の想像の王子様とは違う。
だから、彼にはもう関わらない。終わり。
彼は王子様ではない。幻想を抱いてはダメ。期待したりしてはダメ…忘れるべきなんだ。
こんな始まりで好きになるのは違う。恋愛依存性どころか、セックス依存性になってしまうよ。
(忘れろ…)
(忘れろ…)
(忘れるんだ)
病院に行って、処置してもらったら…全てリセットだ。
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