第8話 彼と私の恋電車 始まりの夜⑧

(私…このまま、車の中で出会ったばかりの人としてしまうの?)


ダメだって思ってても…体がついていかない。快楽が私の理性を邪魔する。

多分…彼が変に嫌なタイプじゃないからダメなんだ。王子様に被ってしまうから…。


(だけど…あの王子様がこんな事したりしないよね?)

こんな本能のままに男を剥きだしたりしないでしょ?痴漢から私を守ってくれてた人なんだもん。


「やっ…ぁ」


こんなエッチな事…車でこんな破廉恥な事…彼ならしないよね。


「まっ…て…」


体に触れられ既に快楽のピークがくる。

窓ガラスも吐息と上昇する体温の熱で曇って外は見えない。


彼がショーツに手をかける。私は咄嗟に掴んだ。


「だ、め…」


私は横に頭を振る。この先はダメだよ…本当に。車でなんて…色々と無理。


「ココまで抵抗しなかったクセに…ダメはないんじゃない?」


正直、ココまで感覚が快楽で満たされてると…抵抗しきれない。

それは私が本気で嫌だとは思っていないから。


彼は再び覆いかぶさって、そして深く濃厚なキスをする。拒否の言葉は聞かないとばかりに。


「ん…ダメ……車…じゃ、やだ…」

「車じゃなきゃ、いいんだ?」

「ひゃっ!」


体が激しく反応する。

彼の動作で一気に快楽が全身に伝わったんだ。

その動作は私を恍惚こうこつで満たしてくれる。


「…もっと…して欲しい?」


私は悶えながら頷く。もう理性の限界で一瞬、車の中でも構わないと思ってしまう程だった。


「…ヒナ…可愛いな…やっぱり」

「え…?」

「俺も限界」


そう言って彼はシートベルトをし直し、車を発進させる。私もオズオズと座席とベルトを直し、余韻で少しウトウトしてしまっていた。



結局、続きをする為に彼のマンションに戻った私達は到着するなり玄関からキスが始まる。

全然余裕がないのはお互い様。

とにかく激しく欲望のままに求めたいんだ。

彼は私を軽々と抱き上げると、寝室に直進した。


その寝室で何度求め合ったんだろう。


明け方まで夢中で繋がった。まるで盛りがついた学生のように。



お互いの事を知ろうとはせず、ただ肌だけを重ねる。

性欲を満たす為の行為だから。相手の情報はいらないんだ。


次はきっとないから…この時間を楽しんでいる。

それだけ。


わかってる。

だから、私は始発と同時に寝てる彼に何も言わず…その場を去ったんだから。








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