## 第七章:師弟の絆
## 第七章:師弟の絆
朝廷への襲撃を阻止してから数日が経った。鷹乃道場には、一見すると平穏が戻っていた。しかし、十四郎と椿丸の間には、以前にはなかった張り詰めた空気が流れていた。
早朝、まだ誰も起きていない時間。椿丸は一人で稽古に励んでいた。
汗で濡れた前髪をかき上げながら、刀を振る姿は美しく、力強かった。
「相変わらず早いな」
不意に聞こえた声に、椿丸は驚いて振り返った。そこには十四郎が立っていた。
「せ、先生!おはようございます」
十四郎はゆっくりと椿丸に近づいた。その仕草には、いつもの厳しさはなく、柔らかな優しさが漂っていた。
「見せてみろ。お前の型を」
「はい」
椿丸は深呼吸をし、再び刀を構えた。そして、ゆっくりと動き始める。
その動きは流れるように美しく、まるで舞のようだった。
十四郎は息を呑んで見つめていた。
やがて、椿丸の動きが止まると、十四郎が近づいてきた。
「素晴らしい」
その言葉に、椿丸の頬が赤く染まる。
「ありがとうございます。先生のおかげです」
十四郎は静かに首を横に振った。
「いや、これはお前自身の才能だ。私は…」
言葉を途切れさせた十四郎は、そっと椿丸の頬に手を添えた。
椿丸は思わず目を閉じ、その手の温もりを感じる。
「椿丸」
「はい…先生」
二人の視線が絡み合う。そこには言葉では表現できない深い想いが宿っていた。
ゆっくりと顔を近づける二人。唇が重なり合う直前、
「おはようございます!」
元気な声が響き、二人は慌てて離れた。
「源太…」
十四郎が小さくため息をつく。
「あれ?二人とも早いですね」
源太は不思議そうな顔をしていたが、特に何も言わずに稽古の準備を始めた。
その日の稽古は、いつも以上に厳しいものだった。
しかし、十四郎の指導には以前にはない優しさが感じられた。特に椿丸に対しては、その傾向が顕著だった。
「もう少し腰を落として…そう、その調子だ」
十四郎の手が椿丸の腰に触れる。その瞬間、二人の間に電流が走ったかのような緊張が走る。
他の弟子たちも、二人の様子の変化に気づき始めていた。
夕方、稽古が終わった後。
椿丸が道場の裏手で水を浴びていると、十四郎が近づいてきた。
「椿丸」
「先生」
十四郎は周りを確認してから、椿丸を物陰に引き寄せた。
「今夜、裏山の滝つぼで待っている」
そっと耳元で囁かれた言葉に、椿丸は身震いした。
「はい…」
その夜、月明かりに照らされた滝つぼ。
水面に映る月が、二人の姿を優しく照らしている。
「来てくれたか」
十四郎の声に、椿丸は頷いた。
「先生…私…」
言葉につまる椿丸を、十四郎は優しく抱きしめた。
「もう、先生とは呼ばなくていい。十四郎と呼んでくれ」
「十…十四郎さん」
その言葉に、十四郎は椿丸の唇を奪った。
長く、深いキス。互いの想いを確かめ合うように、唇が重なり合う。
やがて唇を離すと、十四郎は椿丸の首筋に顔をうずめた。
「椿丸…お前は私にとって、かけがえのない存在だ」
椿丸は十四郎の背中を強く抱きしめる。
「私も…十四郎さんが、全てです」
月明かりの下、二人の体が重なり合う。
互いの肌の温もりを感じながら、二人は深い愛を交わした。
しかし、この幸せな時間も長くは続かなかった。
翌日、道場に衝撃的な知らせが届いたのだ。
「先生!大変です!」
駆け込んできた弟子の声に、十四郎と椿丸は顔を見合わせた。
「どうした」
「葉隠が…葉隠が新たな妖刀を手に入れたそうです!」
その言葉に、場の空気が凍りついた。
十四郎は椿丸の手を強く握った。
「行くぞ、椿丸」
「はい、十四郎さん」
二人は固く手を握り合ったまま、新たな試練に向かって歩み出した。
その瞳には、強い決意と互いへの深い愛が宿っていた。
全てはこれからだった。
しかし、二人で乗り越えられないものはない。
その信念が、二人の心を強く結びつけていた。
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