## 第六章:闇夜の陰謀
## 第六章:闇夜の陰謀
山での修行を終え、十四郎と椿丸は都へと戻った。二人の間には、以前にはなかった親密さが漂っている。しかし、彼らを待っていたのは、さらに深刻な事態だった。
「先生、大変です!」
道場に駆け込んできた弟子の声に、二人は顔を見合わせた。
「どうした」
十四郎の声に、弟子は息を切らしながら答えた。
「妖刀使いが、朝廷を狙っているそうです」
その言葉に、場の空気が凍りついた。
十四郎は素早く立ち上がった。
「椿丸、行くぞ」
「はい!」
二人は急いで準備を整え、都の中心部へと向かった。
街は既に騒然としていた。武士たちが慌ただしく行き交い、市民たちは不安そうに家々に閉じこもっている。
宮殿に近づくにつれ、異様な気配が濃くなっていく。
その時、椿丸が十四郎の袖を掴んだ。
「先生…怖いです」
十四郎は振り返り、椿丸の手を優しく握った。
「大丈夫だ。私がついている」
その言葉に、椿丸は勇気づけられた。二人の指が絡み合ったまま、前に進む。
突然、黒い影が二人の前に現れた。
「よくぞ来てくれた、鷹乃十四郎」
黒い装束に身を包んだ男が、妖刀を手に立っていた。
「貴様か」
十四郎の声に怒りが滲む。
男は薄く笑った。
「そう、私だ。お前たちの追っていた妖刀の使い手はな」
「なぜだ。なぜ朝廷を」
「何故って?」
男の目に狂気が宿る。
「この国を変えるためさ。腐りきった朝廷を倒し、新しい秩序を作り上げる。そのために、この妖刀の力が必要なのだ!」
十四郎は刀を構えた。
「そんな理由で、罪のない人々を傷つけるというのか」
「犠牲なくして、革命は起こせん!」
男が妖刀を振りかざした瞬間、十四郎が動いた。
鋼と鋼がぶつかり合う音が、夜の闇に響き渡る。
椿丸も敵の手下たちと戦いながら、時折十四郎の様子を窺っていた。
しかし、妖刀の力は凄まじく、次第に十四郎が押されていく。
「先生!」
椿丸の悲痛な叫び声が響く。
その時だった。
十四郎の動きが一瞬止まり、男の妖刀が彼の胸を貫こうとした。
「先生ーーーー!」
椿丸の叫びと共に、何かが彼の中で覚醒した。
まるで風のように素早く、椿丸は十四郎の前に飛び出した。
その瞬間、驚くべき光景が広がった。
椿丸の刀が、妖刀と共鳴するように輝き始めたのだ。
「なっ…これは!」
男が驚きの声を上げる。
椿丸の刀から放たれる光が、妖刀を包み込んでいく。
そして、妖刀から黒い靄のようなものが抜け出し、空中で消えていった。
男は膝をつき、力なく刀を落とした。
「どうして…私の野望が…」
十四郎が男に近づき、その首筋を打った。男はそのまま気を失った。
勝利の喜びに沸く中、十四郎は椿丸を抱きしめた。
「よくやった…本当によく…」
椿丸は十四郎の胸に顔をうずめた。
「先生…怖かった…先生を失うかと思って…」
十四郎は椿丸の頬を優しく包み、その唇を自分のものとした。
周囲の喧騒も忘れ、二人はしばしの間、互いの存在だけを感じていた。
やがて、朝廷の警護兵たちが現れ、状況を把握し始めた。
十四郎と椿丸は、事の顛末を説明した。
その夜、二人は静かな場所を見つけ、互いの無事を確かめ合った。
「椿丸」
「はい、先生」
「お前は本当に…驚くべき存在だ」
椿丸は頬を赤らめた。
「そんな…先生がいてくださったから…」
十四郎は椿丸の手を取り、その手の平にそっと唇を押し当てた。
「いや、お前の中にある純粋な想い。それが妖刀を浄化したのだ」
椿丸は十四郎の胸に寄り添った。
「先生への想いです。先生を守りたい、という気持ちが…」
十四郎は椿丸を抱きしめ、その髪に顔をうずめた。
「私もだ。お前を守り、共に歩んでいきたい」
月明かりの下、二人は再び唇を重ねた。
長く、深いキス。それは互いへの愛を確かめ合うかのようだった。
しかし、この幸せな瞬間も束の間。
二人の前には、まだ多くの試練が待ち受けていた。
妖刀は浄化されたが、その力を求める者たちはまだ存在する。
そして、二人の関係を快く思わない者たちもいるだろう。
全てはこれからだった。
しかし、二人は互いの手を強く握り合った。
どんな困難が待ち受けていようと、共に乗り越えていく。
その決意が、二人の瞳に強く映っていた。
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