第9章:溢れる想い
# マニュアル外の恋愛事情
## 第9章:溢れる想い
朝食を終えた後、十四郎とここみは居間で向かい合って座っていた。
空気は張り詰め、二人とも言葉を失っているようだった。
「あの...部長」
ここみが、おずおずと口を開く。
「昨夜は本当に...ご迷惑をおかけして...」
十四郎は首を振った。
「気にするな。君の身に何かあったら...」
その言葉に、ここみの顔が赤くなる。
「でも、私...」
ここみが立ち上がろうとした瞬間、足がもつれた。
「危ない!」
十四郎が反射的にここみを抱き寄せる。
二人は、そのままソファに倒れ込んだ。
「だ、大丈夫か?」
十四郎の声が、いつになく上ずっている。
「は、はい...」
ここみの息が、十四郎の頬にかかる。
二人の顔が、あまりにも近い。
時が止まったかのような静寂。
そして――
ここみが、唐突に十四郎に口づけした。
「!?」
十四郎は、驚きのあまり身動きが取れない。
柔らかな唇。甘い香り。
ここみが、顔を離す。
「す、すみません...でも、私...」
涙ぐんだ瞳で、ここみが十四郎を見つめる。
「部長のことが...好きです」
その言葉に、十四郎の中で何かが崩れ落ちた。
「ここみ...」
十四郎の声が、震えている。
「俺も...君のことが...」
言葉にならない想いが、胸から溢れ出す。
十四郎は、ここみを強く抱きしめた。
「好きだ。ずっと...君のことが好きだった」
ここみの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「部長...」
再び、二人の唇が重なる。
今度は、十四郎から。
深く、熱く――。
理性が飛んでいく。
十四郎の手が、ここみの背中を撫でる。
ここみが、小さく身震いする。
「いいのか...?」
かすれた声で、十四郎が尋ねる。
ここみは、ゆっくりと頷いた。
「はい...お願いします」
その言葉を合図に、二人は夢中で服を脱ぎ始めた。
十四郎は、ここみの身体を優しく抱き上げ、ベッドルームへと向かった。
扉が閉まる。
カーテン越しに差し込む陽光が、二人の姿を柔らかく包み込む。
言葉は必要なかった。
二人の体が、想いを語り合う。
熱く、切なく、そして優しく――。
...
しばらくして、十四郎とここみは向かい合って横たわっていた。
「ここみ」
十四郎が、静かに口を開く。
「俺は...結婚を前提に付き合いたい」
ここみの目に、再び涙が浮かんだ。
「でも...人と生活はできないって...」
「慣れる」
十四郎は、ここみの頬を優しく撫でた。
「俺の流儀を変えてでも、君と一緒にいたい」
「部長...」
「他の誰にも触れさせたくない」
ここみは、嬉し涙を流しながら十四郎に抱きついた。
「私も...部長としか生きていけません」
二人は、もう一度強く抱きしめ合った。
新しい人生の幕開けを告げるかのように、窓の外では鳥のさえずりが聞こえ始めていた。
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