第160話

 そう。ただ、安心させるためだったのだ。

 だが時として優しさはかえって憂いを増幅させる。

 大きな反動の波が返ってくるなど、思ってもみなかった。



「――だいじょうぶじゃなくても、いいの」



 プレヌはもたれた身を反転させて、ロジェを抱きしめた。



 かすかなすみれの香りが鼻腔をくすぐり。

 直後、異変は訪れた。



「――っ……?」


 

 ロジェは鋭く息を呑んだ自身の、声にならない声を聴いた。

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