第24話
「ほれぼれいたしますわね」
できあがったプレヌのドレス姿に両手をうっとりと組み合わせる店員さんの様子は、嘘をついているようには見えない。相当な商売上手のようだ。
「旦那様にも見ていただきましょ」
発せられた単語にどきりと胸が跳ねる。
連れの彼を夫だと思われたらしい。
二重の意味で気恥ずかしくて、シャッと音を立ててカーテンが開けられたとき、プレヌの視線は斜め下に偏っていた。
……見られてる。
視線は外しているがわかる。カーテンが開く音と同時に、香水のショーケースのところにいるロジェが顔を向けたのを。
レースで模ったV字型のドレスの胸元が少し気恥ずかしい。
こういうネックラインを強調した服ははじめてだ。
胸を飾る黒いリボンの中心に、クエムイエローのバラ。
左右の袖には三段レースがぜいたくにあしらわれていて、胸元と同色のリボンが印象を引き締めている。
スカートはレモン色とクリーム色のレースが交互に飾られていて、レモン・ミルフィーユの層を想わせる。
「いかがです、旦那様? このクリーム色がこんなに上品に映えるお方ははじめてでございます」
まるで我がことのように店員さんが胸を張る。
恐る恐る視線を上げて見ると、ロジェの琥珀色の瞳は、まぶしそうにすがめられていた。
「いい出来だ」
「……」
言葉が見つからずにまた、黙る。
慣れない視線や称賛は返しに困る。
そんなプレヌの様子に気を悪くした様子もなく、ロジェは彼女の手をとり奥に誘導しはじめた。
これが、俗にいうエスコートか。
相変わらず数秒遅れて訪れる認識にかぶりを振る。
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