第57話
駆くんのお母さんは憎々し気に続ける。
「しっかり頼みますよ。彼には悪いけれど、ケガをしてくれればあの恋愛映画で駆が代役の話がくる。あの映画の主役には、駆のほうがふさわしいのよ。あなたもそう思いませんか」
は、はぁと、気おされつつ返事をする機械操作担当らしき人に、駆くんのお母さんは念を押した。
「くれぐれも内密に。それだけの報酬は用意したつもりです」
最後に、わかりましたという、おどおどした返事がかろうじてききとれた。
さっき窓からそっとうかがったとき、心苦しそうに汗をふいてる、塚本さんの姿が見える。
カチューシャが調達できていないと嘘の伝言を伝えたのは、会場から純を追い出して、この相談をするためだったんだ。
さあっと全身から血の気がひいて、身体ががくがくと震えだす。
彼のフライング機械に細工をして、ケガさせる計画。
へなへなとその場に座り込みそうになるひざを心でたたく。
純に知らせなきゃ!
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