第34話

 ――え?

 なんか今、亜莉珠ちゃんの声ががらりと変わったような。

 けれど視線をその顔に戻しても、その笑顔はちっとも乱れていなかった。

「だって、ここは芸能界に関係ない、花乃ちゃんみたいな子がくるところじゃないでしょ?」

 ずきっ。

 笑顔で、きっと何気なく言われた言葉は胸に確実なひび割れをしこんでいく。

「そういうことも考えないほどまっしぐらで、ほんと一生懸命っていう意味だよ! がんばってね!」

 さいごに優しくぽんとあたしの肩をたたくと、亜莉珠ちゃんは白い背景とカメラのフラッシュあふれる世界に、花畑の可憐な蝶のように舞い戻っていった。

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