第27話

 あたりがどよめく。

 言葉は難しかったけど、そのときの純の顔を見たら、あたしにもわかった。

 これは、ライブでの登場のしかたを、藤波くんの足に負担がかからない方法に変えようという提案だ。

 すかさず、藤波くんが意見する。

「だめだよ、純。きみが考えた演出だろ」

「いや。このままいくとお前、途中で舞台立てなくなる」

 純が藤波くんの肩に手を置き、口調を和らげる。

「チームなんだから、お互いのこと考えるのは当たり前だ。臨機応変にいこう」

 穏やかだけど、力強い言葉だった。

「……わかった。ほんとごめん」

「純、いいんだな」

 リーダーの美谷島くんの確認に、純は静かにうなずく。

 お願いできますか、と言う純に、さっきまで渋い顔で怒鳴っていた監督が重々しくうなずいた。

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