第26話

 えっ?

 そうだったの?!

 それであんなに激しいダンスを練習してたなんて。

 驚きのあまり口をあんぐりと開けてしまったとき。

「ちょっと待って。少し時間ください」

 純が全体に呼びかける声がして、ガラスの向こうを見ると、藤波くんに駆け寄っていた。

「正真。だいじょぶか。さっきはじめて足の運びが遅れたけど」

「大丈夫、と言いたいところだけど」

 そう言うと、藤波くんはうずくまってしまった。足が動かない様子だ。

「少しまずいな。しびれがおきてる」

 純はうずくまって、藤波くんの右足首をみつめた。

「やっぱりか」


「え、正真どうした?」

「先週のけが?」

「見せてみて」

 愛内くんと美谷島くんも、成瀬くんそっとそばに寄って。

 純の決然とした声が響いたのは、周りで見ていたスタッフさんや舞台監督さんが動き出す前だった。

「決めた。ライブの登場シーン、マシーンを使ったスライドにしよう。ジャンプでの登場は中止だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る