第17話

 日曜日は予定が入らない限り、桜峰図書館で過ごすようにしている。

 周りの人たちが勉強や読書に集中したり、一息ついたりする静かな場所で原稿用紙に向かっていると、小説のアイディアが浮かんでくることが多いんだ。

 でも、さすがに今日はだめ。

 目の前の原稿用紙はたくさんの二重線が引かれたままストップしている。

 その上からどーんという紫の縦線すら降りてきているように思える。

 古い漫画で暗い気持ちの主人公の頭に現れるあれね。

 あはは。……笑えないや。

 心の中でひとりごちていると、とすん、ととなりの席に大きなカバンが置かれた。



「オレたちのライブ見ときながら、なんて顔してんだよ」



 出会ったときと同じ、黒いジャケットに黒いジーパン。そして、よく見るとあのときと少し違う、茶色っぽいサングラス。

 注意してみるとかすかにその奥に透ける、整った大きな瞳。 

「純! やっぱりあんた、純だったんだ――」

 思わず出しかけた声がぎろりとした一瞥で遮られる。

「ばか、でかい声出すな」

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