第15話
「はぁ?」
何を言い出すかと思えば、夏陽も冗談がきつい。
「ふつう、気のある女の子の原稿をこっぴどくこき下ろしたりする?」
すらりとした足で階段を颯爽と上りながら、夏陽はひらりと手をふった。
「あいかわらず、おこちゃまだね、花乃は。男子ってそういうもんだよ」
どう考えても、そういうもんだとは思えないけど、地味系非モテ女子のあたしと違って、夏陽が男子の友達も多くて、人気もあることを考えるとなにも反論できない。さばさばした性格とあんまりマッチしないけど、これでけっこう、夏陽はかわいいからな。
そんなことを思っていると、制服のスカートからのぞくその隠れ美人の足が、すたと立ち止まる。
にっと口元をゆがめて、夏陽は言った。
「そうだ。花乃、そいつとつきあっちゃえ」
ひとつ前の階段につまずいて派手にひっくり返りそうになる。
「心臓に悪いこと言わないでよ」
あたしはちゃんと誰かを好きになったことはないし、芸能界と同じく恋愛にもうとい(小説の中でならありだけど)。
でも、いつかつきあうなら、優しい人がいいなと思う。
あんな失礼なずばずば物を言う輩とつきあうとか、ぜったいない。
「二百万が一の確率で彼が純くんだとしたら、今度あたしと藤波くんをデートさせてって言っといてよ」
あんまりな妄想に思わず笑いが漏れ出る。
「それがねらいかっ!」
ひじでタックルし、あははと笑い合う。
和やかな日常の風景だった。
そこまでは。
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