第13話
「意外だわ」
「だね」
いち早くそう言ったのは美谷島くんと藤波くん。
「純、乙女!」
はやし立てるように言った愛内くんに、純は照れたように手をふった。
「うるせー、ちげーよ、出てるドラマとかで原作になってるのあるから、研究にだな」
「ほんとー?」
「読みながらキュンキュンしてたりして」
純の回答にかぶせた藤波くんや成瀬くんのコメントが、会場を沸かせる。
そうこうしているうちに、美谷島くんがコーナーを締めくくる。
「といったところで、そろそろお時間になったようです。これからも『エクレール』をよろしくお願いします。みなさん、このあとも音楽フェス・ニューウェイを心ゆくまでお楽しみください」
周りの人々が声援を送って、退場するメンバーを惜しむ。
そんな中であたしは一人、立ち尽くしていた。
束の間無人になった舞台に、あたしだけの物語を見ていた。
そこに立つのはきらびやかなアイドル。その姿は恋してしまうほど輝いていて――。
知らず、胸の前で握りしめたこぶしをもっと強く握った。
インスピレーションがわいてきた!
この感覚が冷めないうちに一刻も早く家に帰って原稿用紙に向かいたい。
でも、舞台にはもう別のアイドルグループが上がっていて、心を沸き立たせるような楽しげな曲を奏ではじめている。
踏み出した足を、あたしはひっこめた。
どうせなら、もっともっといっぱい、どん欲に吸いとって帰ろう。
アイドルのふりまく元気を。
気づいたら、名前もはじめてきくはずの新人アイドルグループに、周りの人々と同じように、手拍子を送っていた。
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