第8話

 ふつふつ。心の中にマグマが沸いて、ミニ・花乃がおぼれてしまいそうだ。

「おかげさまで、しばらくすっかり書けなくなりました!」

 べっと舌を出して、そっぽをむく。

 誰にも見せてない原稿を勝手に読まれて、勝手なこと言われて、正直ショックだった。

「ちょっと失礼じゃない? 人のもの見て勝手に意見するなんて」

「ほー」

 この主張には、サングラス男はちょっと目を見はったようだ。

「それは認める」

 悪びれもせず放たれた言葉に思わずそっぽを向いた顔をもとに戻してしまう。

「たしかに、あれが自分の楽しみのためだけに書いた原稿で、そこに人を楽しませようとする意志がないなら、オレがしたことは余計なことだろうな」

 どきっと、心が音を立てた。

 小さな石を投げ込まれただけで、沸騰していたお湯がおさまってしまったみたいだ。

 やつの放った小石はどうやら、心のいちばん奥の部分に当たったっぽい。

 ひそかに胸に秘めてる、少女小説家になるという夢。

 降参の白旗代わりの白い吐息が漏れる。



「……たしかに言い方とか態度は失礼だったけど。あなたの言ったことはあってるよ。勉強不足なの、あたし」

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