第7話

「続き、書いたのかよ。ちびへぼ作家」

 その声を再びきいたのは、やっぱり桜峰図書館でのことだった。

 すらりとした背丈に、やっぱりサングラス。

 ジャケットの色は今日は黒じゃない。濃いグリーンのアウターに、紫のチノパン。

 攻めのファッションであることは変わらないけど。

 ちょっといたずらっぽく上がった口の端。

 大きなかばんを机の足元に置きながらのその気安い口調に、今度はすぐ答えが出る。

「たしかに身長は低めだけど、あたしには、野原花乃っていう名前があるの」

 口をついて出たのは、決して小さくはない声。

 やった。

 言い返してやった!

 心の中のミニサイズ・花乃が歓声を上げてから、ん? と腕を組んで首をかしげた。

 目の前のそいつは驚くどころか、おもしろそうに笑っている。しかもこっちに向きなおって言ったのだ。 

「お前いくつだ」

「……十四才だけど」

 ふん、と息を吐くと、片手を机に片手を腰にあてた偉そうな体勢のままうそぶく。

「三つも年下のへぼ作家なんて、ちびでじゅうぶんだ」

 さらに尊大な感じに前のめりになって、

「で、どうなんだ。執筆の進み具合は」

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