第5話

 クッキーの粉が喉につまって、うおっほごほっと咳がしばらくとまらなくなる。

「さ、さすがにそれは。たぶん年上だよ?」

 ぱきっと、夏陽はほおばったクッキーを勢いよく二つに割ると、

「花乃にはプライドってもんがないの! 大事に書いてる小説ばかにされて、悔しいじゃん」

「ま、まぁね」

 あいまいな返事がミルクティーの湯気に紛れてとけていく。あたしがばかにされるといつだって自分のことのように悔しがってくれる夏陽のことは大好きだけど、あたしは夏陽のように誰にでもはっきり意見を言えるわけじゃないしなぁ。

 そのとき、テレビからさっきまで話していた『エクレール』の人気の曲が流れてくる。

 メロディーは明るいけれど、歌詞はひたむきなラブソングだ。


 つまづいて 転んで もっと笑って

 うまく歩けない きみが好き

 その笑顔で 僕の心 ずっと ぎゅっと 離さないでいて

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