1.彼はアイドル!?

第4話

 翌日、学校から帰ったあたしは、制服姿のまま親友の夏陽なつひとリビングで宿題をしていた。テレビもお菓子もありな勉強会はうちか夏陽の家で不定期に開催されるけど、いつもだいたいろくに進まない。

「ねぇ、花乃、昨日のミュージックタイム見た? 『エクレール』が出てたの!」

 夏陽は『エクレール』のファンだ。そう、小説のためにアイドルについて取材をした友達っていうのがこの夏陽なんだ。

 現役男子高校生アイドルグループの中で、夏陽の推しメンは、藤波ふじなみくんらしい。

「藤波くんはもちろんだけど、じゅんくんのバク転すごかったな!」

「ふーん」

 あたしはあんまり興味ないから、話半ばでききながら、

「そっか。よかったね。それよりきいてよ、夏陽!」

 あたしが小説を書くことを打ち明けているのも、親友の夏陽にだけだ。

 だから、図書館で出会った強面サングラス男のことも、あらいざらいぶちまける。

「『へぼ作家?』なにそれ、めっちゃ失礼だね」

 自分のことのように眉をつり上げて怒ってくれる夏陽に、クッキーをほおばりながら大きくうなずく。

「でしょーっ」

「花乃の小説、おもしろいと思うけどな」

 さくさく、かりかりと二人してクッキーをかみ砕く音がリビング内に響く。

「ね」

 見ると、夏陽がクッキーをかじるのをやめて、意味深に微笑みかけてくる。

「今度会ったら、言い返してやったら?」

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