侑雲空

歩けば歩くほど、砂嵐の数は増えていく

空の幅は狭まっていく

不思議と喉も渇かなければ、空腹を覚えることもなかった

空が狭まっていっても、明るさは変わらない

何故か目の前だけは明るいのだ

空が狭まるにつれ、背後、斜め後ろ、両脇、斜め前と

後ろからゆっくり手で目隠しをされるように視界は狭まるのに

目の前だけは真っ直ぐに明るい

時折吹く峻烈な風と共に、地面の砂が私を追い越して光へと飛び込んでいく

その頻度は視界が狭まるにつれて増え

やがて人を形取り、恰も鈍臭く歩いている私を嘲笑いながら光の先へと向かっていく

だんだんと、曖昧であったそれは蓋しく人であり

追い越せぬ私こそが砂ではないのかと

肥沃な思考と、水の感情

疑問は正しく育ち、脳に蔓を絡み付ける

私は砂である

仰向けに倒れる、不思議と、どさりとも、ばたりとも、重みのある音がしない

私は正しく、砂であった

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侑雲空 @no_fly_life

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