違い
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小学生の時は一つ上の学年ってだけで、ものすごく上級生って感じがした。
中学生の時ですら、それを感じた。
でも高校生になった今は、上も下も大差がないように思う。
「でも喋ってみたら、案外その差ってわかるもんじゃない?」
南朗はそう聞き返した。
「……喋るほど年上とは思えない人ってのもいますけど」
「あす……俺のこと見ながら言ってる?」
「でもナロ先輩は見た目だけは高3よりもっと大人っぽく見えますよ、見た目だけは」
「二回言った?」
「大事なことなので二回言いました」
「そんなに!?」
明日美は自販機でコーヒーのボタンを押した。
南朗は中庭のベンチで明日美の姿を見ながら溜め息をついた。
「まぁ……あすが俺のこと年上と見てないのはわかってたけどさ」
「だって、あっくんと同い年には見えないし」
明日美の言葉に南朗は歯を見せて笑った。
「そうだな。お前の兄貴はむちゃくちゃしっかりしてるからな」
「……私とあっくんって似てる?」
「ん?あぁ、めちゃくちゃ似てる!!初めて見た時、淳史かと思ってたもん!!」
それは去年の入学式の話。
南朗が「お前、淳史のドッペルゲンガー?」と声をかけてきたのが始まりだった。
しかし明日美が聞きたいのはそれではない。
首を振った。
「見た目じゃなくて、中身」
「中身ぃ?」
「はい」
「……」
「……」
南朗はニヤッと笑った。
「見た目似てるって言ったけど、淳史はこんなに小さくねぇな」
わざと答えを出さなかった。
明日美は思った。
多分、自分が欲しい答えを南朗は言えないとわかったからであろうと。
明日美は質問を諦めて、南朗の隣に座った。
「あす」
「はい」
「違いなんて、大したことじゃねぇよ」
「はい?」
「似てても、違っても……何てことねぇよ」
「……」
「見た目も中身も…ついでに年齢も」
明日美は南朗に倣って、空を見上げて雲を見た。
「血は繋がってて、見た目はそっくりなのに、成績はウンデイノサ……でもですか?」
「あす、『雲泥の差』よく知ってたな」
「……お母さんが使うんです」
「……あぁ」
「……」
「うん。大したことじゃねぇよ」
「……」
「あすは勉強好きか?したいのか?」
「嫌いです」
「じゃあいいじゃねぇか」
「……勉強はしたくないけど、成績は上がりたい」
「ははは、ワガママ」
南朗が笑うから明日美も笑った。
明日になっても
兄にはなれないのだから。
「ナロ先輩」
「ん?」
「年の差も関係ないんですよね?」
「もちろん!!」
「笹山先生って何歳なんですか?」
「んー…翔子さんねー…」
明日美は南朗の返事も待たずにコーヒーの缶を開けた。
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