準備
準備
全力で真剣に生きていこう
それって危険だと思いません?
後悔しないように……
失敗しないように……
今日を地球最後の日だと思え
人との出逢いは一期一会だから、ひとつひとつを大切にしましょう
そうやってあまりに今を大事にして
人生に正解し続けて、悔いもなく、最高に幸せだって思ったら…
全力で真剣に生きていったら、明日に思い残すことが本当になくなって、ホント、なんとなく
『あ、死ねるわ……』
ってなりません?
全力で生きるって、全力で死ぬ準備をしてるみたい…
「……あす、どうしたん?ヤミ期?」
「別に……。なんとなくそう思っただけです」
「あ、そう」
「……」
「淳史(アツシ)に何か言われたん?」
「……あっくんは何も言いませんよ」
「まぁ、そうだな。淳史はイイ奴だもんな」
「……」
「おし!!たこ焼きでも食べに行くか!!」
「ごちそうさまです!!」
「……奢るなんて言ってねぇよ」
「今奢らなきゃ、いつ奢るんですか?」
「お前ってホント俺のこと先輩って思ってないよな?」
「え……逆にナロ先輩は自分のこと、先輩だって思えてるんですか?」
「……」
「……」
「……ちょっと無理かな」
「でしょ?」
「そのくせ奢らそうとするよな~。」
喋りながら二人は夕暮れの教室から出ていった。
「あす、つまりアレだろ?」
「はい?」
「何事も全力じゃなく、ほどほどに生きたいってことだろ?」
「……はい」
「でも、まぁ……確かに俺らはあれだよな。死ぬ時に幸せだったー!!って言いたいから頑張ってるのかもしんないな」
「……」
「なるほど、俺らは毎日死ぬ準備をしてるわけか……面白い」
「……」
「あすと喋るのは面白いな」
「……ナロ先輩、変」
「……は?」
「私の話が……死ぬ話が面白いって……なんか心が病んでるんじゃないですか?」
「ええ!?言い出したのはあすだろ!?」
「面白いとまでは言ってません」
「あす……」
「なんですか?」
「……のんびり死ぬ準備した方が確かに長生きだな。俺、発見!!」
「……発見したのは、私です」
「いやいや、これは二人の発見ってことにしようぜ!!」
「はいはい」
「全力の短命が幸せだって人も、長く生きた方が幸せだって人も……色んな人がいるんだもんな」
「私は多分、幸薄短命だと思います」
「何それ?良いとこ無しだな」
「そうですか?楽じゃないですかね?」
二人の伸びる影はゆらゆら揺れながら、校門を通りすぎる。
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