クロスオーバー 〜全てに限界があるこの世界で、俺は”超”える〜
敬虔な翁
プロローグ
???
「ここは、どこだ…」
ゆっくりと意識が覚醒していく、そして違和感に気が付いた。
手足が壁に張り付いて動かせない。
「なっ、なんだこれは!」
必死に動かそうとするがビクともせず、なんだか手首と足首に力が入らない。
「しばらく力任せにやってみたがこれは…」
どうにもならない。そう判断した俺は頭を素早く切り替え、この状況を一刻も早く理解する為辺りを見渡す。
どこまでも続くような真っ白な空間、そして俺と同じような状況になっている人達が大勢いた。
どうやら1〜2メートル間隔でこの巨大な壁に貼り付けられているようだ。
俺と反対側にある壁にも同様に人が大勢貼り付けられている、人数が多すぎて壁の端が見えない程に…
あっちの壁とは大体2キロ程度離れているだろうか。
「ちょっと本気を出すか…」
俺は体全体に魔力を巡らせ、爆発的に膨れ上がらせる。
「はぁ!」
その時…
「なっ、なんだ?」
あれ程までに高まっていた魔力が一瞬で周りに分散した。
おかしい…何かに吸われている訳でも、人為的に散らされた訳でも無かった。
——魔力のコントロールが出来なくなっている?
いやでも、俺自身が誰かの魔法で弱体化したとも感覚的には感じれない。もしそうだとしてもまるで元々出来ていなかったように自然的だ。
「おい、そこのお前!」
そんな風に俺が思考を巡らせていると上から男の声が聞こえて来た。
「もしかして俺に言ってるのかー!」
俺は相手に聞こえるよう大声で返事をする。
「あぁ、そうだよ!他に誰がいるってんだ!」
な、何だこいつは、初対面で何故こうも偉そうに…
「いや、俺以外にも人はいるだろ?それに「おい、お前!」だけじゃ俺かどうかは分からな——」
「ごちゃごちゃうるせぇなぁ!とりあえず俺の話を聞け!」
おいおいこいつ本気か?普段ならこんな奴相手にはしないが…はぁ、仕方ないとりあえず話を聞くか…
「…分かった話してくれ!」
「そうだよ!それでいいんだよ!ハハハハッ!他の奴らと違ってお前が話分かる奴で良かったぜ!」
「ん?」
此処で一つ俺の中で疑問が浮かんだ。
「他の奴って事は俺以外にも話しかけた奴がいるのか?」
「あぁそうだよ!でもよぉもれなく全員フルシカトだぜ!?寝てんのかコイツら!」
確かに、俺の横や下の人達を見ても目を瞑り眠っている…いや気絶しているように見える。
「分かった話の腰を折ってすまなかったな、今度はそっちの話を聞こう」
「お前さー!体に力入るかー?!」
そう言われもう一度試しに魔力を高めてみる、がしかし直ぐに散ってしまった。今度は普通に力を入れるが手足には全く入らない。
「体には何とか入る、だが手足には少しも入らない」
「お前もかー!そっか…そんじゃあ気上げれるか?!」
気?なんだそれは…
「質問を質問で返すようだが、気と言うのはなんだ?」
「あ!?お前知らねぇのか?!」
「あ、あぁ」
気か、魔力の事だろうか?確か南の大陸では他の言い方をしていたはず…
「もしかして魔力の事か?」
「はぁ?魔力?何だよそれ?!」
魔力を知らない?いや、そんなはず…
「本当に知らないのか?」
「いや知らねぇって!」
一体どう言う事だ…何がどうなっている?
「なぁ何がどうなってんだよ?!」
「こっちが聞きたい位——」
パンッ、パンッ!
どこまでも続くような真っ白な空間、すると突然そこに乾いた手を叩く音が響いた。
『やぁ皆んな、久しぶりだねそっちで言ったら大体5年ぶりかな?』
頭に直接響く懐かしい声、ふと周りを見るとさっきまでとは違い全員が起きている。
『突然こんな変な場所に連れてきてごめんね、でもこれが僕の言ってた夢なんだ』
気がつくとこの空間の地面に一人立っている声の主を見つけた。
「お前は——」
『おっとごめんね、それは僕にとって都合が悪くなっちゃうんだ』
俺は口を閉じられた。
『僕は今この場所にいる全員と会話してる、もちろん一人一人とも会話できるけどね、だからさっきから何人かとは話してたよ!』
これは、一体…
『そうだね、史上最強の大賢者と言われた君が疑問に思うのも仕方ないよ、だから今から説明するね?』
い、今は俺とだけ会話してるのか?
『そうだよー、でもちょっとだけ違うかな皆んなと同時に話してるよ』
っ!?、つまりお前は…この人数規模での会話を脳で同時処理してるのか?
『まぁ、そうなるかな?』
お前はやはりなんて奴だ…
『ふふっ、まぁね?』
『じゃあ早速皆んなに説明していこうかな!』
クロスオーバー 〜全てに限界があるこの世界で、俺は”超”える〜 敬虔な翁 @keikenokina
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