Ep.x+5 -「…響谷くんは、いつになったら襲ってくれるの…?」-

 お腹に掛かる重さを感じて目を覚ます。少し目を開けてお腹の方を見ると、やはりと言うかなんというか、結華が俺の上に跨っていた。

「…おはよう結華」

「うん、おはよう、響谷くん」

「…降りてくれないかな?」

「やだ」

 そう言うと思ったよ…。

「…それで、どうしたの?」

「…響谷くん…は…その…」

「…なんか言いづらい事でもあるのか?言いたくないなら言わなくてもいいけど…」

「…響谷くんは、いつになったら襲ってくれるの…?」

 …え。

「私…結構誘惑してるつもり…。沢山体を押し付けたり…キスしたり…好きって耳元で囁いたり…。…いつになったら、私のこと襲ってくれるの…?」

 すこし涙目になりながら、結華は俺にそう問いかける。

「…結華は…さ、襲ってほしいの?」

「…うん」

 …そうかぁ…。そうなのかぁ…。

「…その…響谷くんが嫌、とか…止めて欲しい…とかなら…もうしないけど…」

「それは無いから、大丈夫、安心して」

「…ほんと?」

「あぁ」

 俺が頷くと、結華の表情が少し明るくなる。かわいい。

「…響谷くん、今日今ここで…一線、越えたいな…」

「…え…まじで…?」

 俺のその確認の声を聞く間もなく、結華は服を脱ぎ始める。跨られているから逃げようにも逃げられない。

 せめてもの抵抗として結華から目線を逸らす。

「響谷くん、私の裸なら1度見てるよね…?」

「そうだけど…」

 それとこれとは話が違うだろ…?…多分…。

「それに…まだ下着は着けてる、から。…響谷くんが外してほしいって言うなら…外すけれど」

「っ…」

 さっきから段々と結華の声が色っぽくなってきてる気がする…。

「響谷くん、ちゃんと見て…」

 顔を強引に結華の方に向けられる。結華の白い肌や下着の色と模様、それから…、…。まぁなんせそれらが目に入り、その全てが記憶に強く焼き付いていく。

 …これは…ちょっとマズい…。

「…触って、見る?」

 そんな質問をしながら、結華の手は俺の手を握って、自身の胸へと押し当てる。

「もう触ってるけど…」

「…っ…好きに…していいよ…」

 これはマズいって分かってるのに、逃げられない。…理性が段々と溶け出して崩れていく。

「…響谷くん、すき」

 …ぁ…。



 …その後、響谷くんと何をしたかについて、言及はしないけれど…。強いて言うのなら、とても良かった。

 ………。

 …えへへ…。

 響谷くんの上に跨っている状態から床に降りて、ベッドから遠くの方に投げ捨てた私の服を拾い上げて再び着る。

「…うん、変じゃない…よね」

 ベッドのすぐ下に落ちた下着も履いて、響谷くんの隣に寝そべる。ついさっきの事を思い出すと、何というかこう、不思議な気分になる。

 嫌な気持ちとかは一切なくて、むしろ今は高揚感や幸福感に包まれている。

 響谷くんとやっと、一線を越える事が出来た。今日は特別な日。

 お赤飯でも食べようかな。



 …なんだろう、なんか罪悪感っていうかなんて言うか…。隣には満足げな顔を浮かべる結華が眠っている。…俺に抱き着いて。

 さっきまでもっと近くで感じてた結華の体の感覚、それが少し遠くなる。

「………ま、もう少しだけ寝るか…」

 今日は葵も帰ってこないらしいし、特に急ぎの用事があるわけでもないし…。

 そんな事を考えていると、睡魔がゆっくりと襲ってくる。それに意識を委ねて、微睡みの中へと落ちていく。



「…ん…」

 今…8時…か…。そろそろ起きなきゃな…。

「結華、結華、起きろ~。もう8時だぞ」

 そう言いながら結華の体を揺する。

「…ん…おは、よ…響谷くん」

 薄く目を開いた結華が、とろけた声でそう俺に挨拶をする。

「おう、おはよう。よく寝れた?」

「…うん。響谷くん、好き」

「…どうした、急に?」

「…ううん、何でもない」

 結華が俺に抱き着いてくる。

「…悪い夢でも見たのか?」

「ううん、本当に何でもない。ただ響谷くんとこうしてたいだけ。嫌だったかな」

「いいや、全然嫌じゃないよ。…というか、これも誘惑?」

「…そうだ、って言ったら?」

「別になんにも…。っていうか、そろそろ朝ごはん食べよう、お腹減ってきた」

「うん、そうだね。食べよ」

 2人で部屋を出てリビングに向かう。

「もうトーストで良いか」

「ベーコンと目玉焼きしておくね」

「うん、ありがとな結華」


 朝食を食べ終えた後、俺はまたしても結華に跨られていた。

「…結華、なにしてるの?」

「響谷くんに跨ってる」

「いや、それは分かってるんだけどさ」

「理由?」

「うん」

「…特に、ない。ただ響谷くんにこうして居たいだけ」

 …まあ、平常運転そうで安心…か?

「…でも、響谷くんとこうしてると、少しだけ…キュンってするかも」

「…どこがかは聞かないでおく」

「うん、それが賢明」


「…なあ結華」

「ん?どうしたの響谷くん?」

「俺、結華と出会えてよかったと思ってるよ」

「…本当?」

「あぁ。…まあ、今ふと思っただけなんだけどさ」

 …本当に何でもない、ただふとそう思っただけの事。けれど、出会えてよかったと思っているのもまた事実だ。

「…まあ幸せには慣れそうで良かった」

「うん。…次するときは、子供、作ろうね」

 …えぇ…。


――――――――

作者's つぶやき:もういい加減シーズン3として出してもいい気がしてきたんですよね~、あれやこれやと書いてるうちに思い浮かんできてしまって。

まあシーズン3は作るつもりないんですけれどもね。

して。これは消されないですよね、そう信じています。レイティングは指摘等ございましたら着けさせていただきます。

…さて、次回は何をするんでしょうかね、このカップル。

――――――――

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