第7話 私の魔法は 前編
主人公:卑屈な元JK
西の森の魔女:魔法以外は残念なn歳の幼女
この世界に呼び出されてから、三か月。
魔法に関するあらゆる座学を経て、ついに実践です。結構身になった気もしますし、全く身についてない気もしますが、まあそこは目をつむりましょう。
だって、ついに魔法が使えるというのですから。
マナの問題も、ここ三か月の間に西の森の特殊な薬草で増やし、ここ二か月の間に瞑想はしてきたのですから、まあ大丈夫でしょう。魔法幼女曰く大丈夫らしいですし。
「さて、と」
私を外に連れ出して、白髪の魔法幼女は言います。
「マナには属性があり、その属性によって使える魔法の属性が決まる。属性は火、水、緑、闇、光、それから無属性がある。ここまではいいね?」
私は頷きます。この世界における魔法論の基本中の基本です。どこかで聞いたことがあるような属性の類型であるせいか、覚えやすいのはありがたいです。
幼女からを大辞典を受け取った後に火の魔法を唱えても火が出なかったのは、マナの量や質の問題の他に、属性が合っていないという問題もあるとのこと。大抵の者は一、二属性が精々らしいです。
しかし、そこの魔法幼女は四属性。火、闇、光、無属性の四つです。私の知っている魔法をこれに当てはめると、爆発魔法は当然火で、転生魔法や転移魔法、半透明の防御魔法は光属性になるとのこと。
また魔法によっては複数の属性に存在するものがあり、転生魔法や転移魔法は光属性と闇属性、それから無属性に存在し、防御魔法は全属性に存在するみたいです。
「それで、私のマナや魔法の属性は何ですか?」
「まあ待ちたまえ。使ってみればわかるさ」
「……それって危なくないですかね?」
「まあ、お前のマナ程度じゃあぶないことにはならないさ」
少々癪に障る言い方ですが、まあここは魔法の先生を信じることにしましょう。
「でも、属性がわからないと唱えられないんじゃ……」
そうです。右腕に携える大辞典から探し出して魔法を使うには、自分の属性を知らないことには話になりません。火の属性を除いて一つずつやっていくのも、幼女の言葉があるとはいえ、何だか怖いですし。
そう考えると、あのときうっかり火の魔法を唱えようとした自分の、何と不用心なことか。たまたま発生しうる条件でなかったとはいえ、今でも身震いがします。
「防御魔法だよ」
幼女は言います。
「防御魔法を唱えると、その者の属性に応じた防御壁が発生する。火なら炎の盾、緑なら木や葉の盾、というふうにね」
曰く、特に防御魔法は咄嗟に用いることが多いため、属性を表す単語を省略することが多いとのこと。また、きちんと攻撃に反応できるよう、緑、光、闇、無属性に存在する察知魔法を組み合わせることが多いのだとか。
「なるほど、です」
「じゃあ、さっそくやってみようか」
ひゅおう、とくぐもった風の音。
期待と不安の中で、前方に手をかざします。そして、前方に壁を作ることをイメージして
『……スクトゥム』
現地語で盾を表す呪文を唱えます。
しかし、何も現れません。
『スクトゥム!』
もう一度、唱えてみます。しかし何も現れません。
どういうこと? と思いながら幼女の方を向きます。
『……やはり』
幼女は、にやりと。
……そうですか。つまり、私は晒し者ですか。こいつ、私をバカにするために、こんなことをさせたのですか。
この世界の言語や魔法を学ばせたのも、マナを増やすために特殊や薬草を与えたのも、マナを練るために瞑想をさせたのも、すべては無駄なことで、その様子を陰で笑っていたのでしょう。
そんなふうに、怒りと悲しみに暮れていると、幼女は言います。全く意に介していないという様子で、宣います。
「今度は、日本語で唱えてみてくれ」
「……え?」
こいつは、何を言っているのでしょう。
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