第3話:水あめ ≠ はちみつ

何年か前にも、似たような経験がある。

年末におせちの黒豆を煮ようと思って、近所のスーパーに水あめを買いに行った。

「水あめは、ありますか?」

「はちみつしか、ありません。」

はちみつで黒豆は煮れないだろうに、しらんけど…。


作り笑いで店員さんとそんな不毛な会話をした日の朝方、うっすらと目を覚ますと、甘いにおいのする六角形の小さな小さな部屋の中に、わたしは収まっていた。


むむむむ、ここはどこなのだ!?

おそるおそるそっと顔を出すと、右隣のお部屋から、黄色と黒のシマシマ模様の蜂さんが、お出かけの準備をしていた。

「わたし、今出ると、もしかしてちょっと刺されちゃったりするのかのなぁ…」

と小さな声で聞くと、その蜂さんは右側を見てから、小さくうなずいた。

左隣の蜂さんも、下の階の蜂さんも、とても忙しそうにバタバタ準備中だった。

いかん、いかん。痛いのはきつい。

働く蜂さんには大変申し訳ないが、ここはもう二度寝で対応しよう。


すこしゆっくりめに目が覚めて、事なきを得た。

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