第11話 牡丹誘拐 [後編]

 クリーニング店を目指し、バイクを走らせる。

 牡丹の無事を信じて、只管にひたすらに夜道を走らせる。

 クリーニング店に着くが閉店してるのか、シャッターが閉まっている。どうしたものかと悩んでいると男の声が近づいて来る。とりあえず身を隠し男の声に耳を澄ます。

「ほら、昼間に攫った女の子いんだろ?そうそう、その子、何か心を折れて、今は従順らしいぜwwいやマジで、そうそう、家族だったら泣くわwwでも本当にあれで能力出んのか?だって、あれじゃ傍から見たらただクロさんの趣味だろ?」

 高笑いが夜の街に響きながら楽しそうにしながら、煙草に火をつけて縁石に座り、電話を切る。話を聞く限り、ここに牡丹が居るのは間違いではないらしい。タバコを吸い終わったのか男が立ち上がり、建物に戻る。

 後ろを着いていきドアを開けるのを見たテンキーらしき機械を触りパスワードを打ち込み、ドアを開けて中に入っていく。

 すかさずドアに近づき、押していた通りにボタンを押していくとロックが解除された。

 ドアを開け中に入る。

 重厚感のある扉を開け中に入ると、無機質な廊下の先に階段があった。

 階段を降りていくと牡丹の声が聞こえてくるが、かなり呻きに似て苦しい声を出していて、焦る心を殺しながら。廊下についている室内窓を覗くと。

 確かにさっきの男の言うより程遠く感じるが妹を捨てるわけには行かない。

 と近づきすぎたのか警報がなり、武装した人々が一斉に出てくる、すると牡丹を連れて見たことのある顔が出てくる。

 同じクラスの千秋だ。

「千秋!なぜ?…」

「なぜって愚問だな〜だって君が僕の両親を日の目を浴びることのない世界に入れただろ?」

「いつの話だ?」

「まぁこれは俺自身の話だから、良いとして、この子は、我等、SUTが預かる。」

「それはさせない。」

「なぜだ?聞いているぞ君達は血が繋がってないらしいな。他人だろ?」

 千秋の言葉に言葉が詰まるたしかに他人……でも家族……でも自立しても良い年頃。何なら牡丹もそうしたほうがいいのだろうか。

「図星か?」

 いくつもの銃口が向けられる中、俺は千秋の言葉に真剣に悩んでしまい、座り込んだ

「連れてけ…」

座り込んだ俺を武装した男二人に抱えられ、奥へと運ばれていく。

「戒斗!」

 牡丹が叫ぶ、その叫ぶ声に俺の何かが外れた。

 俺をつかんでいた二人を薙ぎ倒し、て千秋に近づき銃を突き立てる。

「なんの真似だ?」

 慌てたように牡丹の首を指差した。

「これが爆発してもいいのか?」

 スイッチを左手に持ち威嚇してくる。そこで銃口をスイッチに向け発砲、するとスイッチを貫通し手を怪我した千秋は牡丹を突き飛ばし、手を抑え縮まり呻く。

 牡丹の首枷を取り、建物の外へと走る。すると銃を構え、俺に向けて撃ち込む。腕や足を掠めたがただ只管走りバイクのところに辿り着きバイクの後ろに牡丹を乗せて所謂二人乗りで、家へと向かうが後ろから追いかけてくる。しかし、夜だというのと、住宅地を走ったため銃を撃っては来ない。幹線道路から路地や、入り組んだところを通って撒けたのか、追手の姿がなかったので速やかに帰った。

 家に着き、牡丹が先に入る。俺はふと掠れた部分を見ると傷が癒えていた。 不思議に思いながら家に入ると母親と牡丹が抱き合い涙を流していた。

 かなり怖い思いをしたのだからと母親に俺と寝るようにと牡丹に言った。皆が寝ているので、俺の部屋に静かに上がり、牡丹を優しく抱くように狭いシングルベッドで寝た。

 ふと、目を開くと、よほど怖かったのだろう。俺の胸で牡丹が涙を流していた。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る