第12話 面白い店見つけた
ついていった先は床に胡坐をかいて座るタイプのテーブル席だった。話しかけてくれた男性を含めて4名が歓迎してくれた。今度は自分たちが質問攻めされる番になる。プライバシーを考慮した上でなるべく頑張って答えたつもりだ。しかし、場の空気が著しく変わった質問があった。
「今日は何目的で来たんですか?」
「いや〜、こういうお店は初めてなもので全然わからないんですが、寝取られに興味がありまして……」
4人の目が一気に綾乃に集中したのがわかった。別の言い方をすると、回答を聞いた瞬間に全員が動きを止め、自分とは
ここで一般的な夫はどういう反応を見せるのか、それは知る由もない(そもそもこんな店に来ないだろう)。亮介の場合は、あまりの嬉しさに興奮度が急激に上昇する、ということになる。
「ほんとですか? こんな綺麗な奥さんが……」
「寝取られって何されるか知ってるんですか?」
「奥さんが他の男にやられるの好きなんですか?」
矢継ぎ早に質問され、綾乃は頬を赤らめながらもちょっと楽しそうに見える。この男性達には綾乃が寝取られ経験者だなんて想像もできていないのだろう。
綾乃が笑顔で答える。
「はい、知っていますよ」
「そうなんだ!」
「じゃ、今日はそのつもりで……?」
「そうしたいところだったんですが、すみません、実は今日は電車の関係でもうそろそろ帰らないといけないんです……」
一同に落胆の表情が浮かぶ。それはそうだろう。がっかりなのはこっちもだ。こうしたバーには時間の余裕を持っての来店が必須だ、と痛感する。後ろ髪を引かれる思いで店を出る。
「なんか、すごかったし……面白いかも」
「そうだね、ほんと面白かった。ただ、惜しかったね。もっと時間があれば……」
「うん。あのままうまくいっていたらあたし……」
「……すごいことになってたね、間違いなく」
4人。そんな大人数の男性を相手にする綾乃を想像するだけで――。
亮介は
◆
いくつかのバーを試すうちに、行きつけとなる場所もできた。常連というほどではないが、月に一度ほどの頻度で綾乃が寝取られるペースが出来ていた。
交わってきたのはいろんな男性たち。しかし、ただ誰かに抱かれれば嬉しいというものでは無いのだ。綾乃もその相手も、たとえ仮初めだとしても胸の高鳴りやときめきが感じられる。お互いにそんな相手だと思えることが最も大切なのだ、と学んだ。
「今日の人、すごく大きかったね」
「うん。見てすぐそう思ったけど、お口に入った瞬間もすごかった」
「そうなんだ。でも、バックの時の綾乃、見たことの無い表情してたよ」
「壊れちゃう……って思ったもん」
3Pになることもあるが、綾乃が抱かれているのを亮介が見ることが多い。その後は嫉妬に狂う夫による上書きプレイ。二人とも、それがしたくて寝取られている。
「ところでさ、バーの外でゆっくり抱かれることってできたらいいね」
「俺も思った。それに、未遂に終わったけど複数プレイしてみたいよね……」
「……うん」
ハプニングバーデビュー直後の綾乃の顔を亮介はしっかりと覚えている。複数の男性におもちゃにされ、可愛がられ、塞がれて、鳴かされる。そんな渦の中にいる自分を想像して愉悦の表情を浮かべる綾乃。意思確認は今初めてしたが、亮介の見立て通りだった。
「バーの外で会うっていうハードルがあるからなぁ……」
ハプニングバーでのNG行為の一つ、連絡先交換の禁止。
そもそも入店時に携帯電話は鍵付きのロッカーに入れておくというルールがある。店内の様子をリアルタイムに外の人間に伝えるというのは御法度というわけだ。そして、気に入った者同士がバー以外で会えるのでは商売上がったり、ということもあり、厳しく管理される。
上目遣いで亮介を見ながら、綾乃が言う。
「実はね、面白い店見つけたんだ」
虚をつかれた亮介。手早く携帯の画面を見せる綾乃。
「コミュニケーション……バー……?」
「そう。ハプニングバーとは違う感じみたい。たぶん他の男性と連絡先交換とかできるんじゃないかなって感じがする」
画面をスクロールしながら頷く亮介の顔を覗き込みながら綾乃が聞く。
「どう、行ってみる?」
「もちろん!」
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