白装束、地上波へ。
そうだ、やはりそうだ。
あれは初恋の相手だ。本物の初恋の相手だ。
淡々と彼女はこの町について話している。
近くの家のおじさんはヒューと冷やかしを入れるが、隣にいた妻に引っ叩かれている。
彼女はこちらを見て手招きをする。
どうやら生中継のようだ。私は小説家、
だがこんな姿で世に映ってしまう。世に知れ渡ってしまう。逃げたい。だが、好きだと言うことも伝えたい。
どうしてだ?何故そんなことを思っている。今?何故今?そんなことを思ってしまうのか?私は彼女のことを思いながら眠った日もある、彼女のことを思い浮かべて書いた小説もある。しかし、何故今なんだ、今どうしても言いたい。今だ今!と思うが体は言うことを聞いちゃくれない。
「おばけさんたちーおいでー」
と言われるがままに私たちは一列に並ぶ。
これで我々おばけ一同は、根っからもなくお茶の間に映る。白装束Aは「どうも、おばけでーす」と辿々しい様子で言う。それを半分無視するかのように彼女は
「はい、この町のハロウィンです、色々な幽霊がいるみたいですよ」
と声色を変えながら上手に話す。
やはり彼女だ。惚れた時のまんまだ。
どこかの家のおばさんがカメラも気にせず誰かから貰った缶に入ったクッキーを持ってきた。それはそれは大きく。彼女は苦笑いしながら受け取り、トリックオアトリート!なんて言ったりした。
私は隣にいた彼、白装束Aに初恋の相手だと言うことをこそこそ伝えた。
え、そうなんだ!と彼はかなりの声で言った。
幸い彼女には聞こえていないようだが、彼が提案したのだ。それはそれはこそこそと、俺の後に続いてと。
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