白装束Aの過去、一年前。

撮影が開始されるようで、

テレビ局の取材陣が3人ほど見えた。

私たちはまだこんなことをしている。

途中余程何もなかったのか、

「え、ええおばけなんてないさー」

なんて言っていたりもした。

私はまあ普段味わえないようなことを味わえているななんて思ったりもした。

白装束Aは皆に向かってこう言う。

「それではみなさん、トリックオアトリート」と。

私は今気がついたのだ。

今日は10月31日、ハロウィンだと!

どうりで魔女がいるわけだと気がついた反面、何故白装束が3人もいるのかなんて思った。

そろりそろりと私たちは町へ向けて歩き出す。

私は白装束Aの彼が何故、

伝統だなんて言っていたのか少し気になった。

まず、最初の住宅街へと足を踏み入れた。

白装束Aの彼はまず、がおーと言ったのだ。

正気か?と思ったがあの理屈では

がおーと言わなければならない。

結果私以外の3人ががおーと言った。

子供はこちらを見て笑っている。

そりゃそうだ。こうなることは目に見えてる。

いつの間にか鎌のおじさんは鎌を置いていた。

弟の彼、白装束Bに私は問いかけた。

「ハロウィンなのに、お菓子もらい、行かないのね」と。彼は少し笑いながら、

「そうなんですよ、ここの地域、高齢の方ばっかなんで一昨年は致死量の麩菓子を貰ったんですよ。それこそ町中の麩菓子が一気に集まりましたからね」

なるほどと私は考えた。致死量である。

麩菓子と死という言葉は関連することもなく、

結びつくこともない。

私は疑問に思ったことを聞いた。

「お兄さん、どうしてこんなにハロウィンを大事にしてるんですか?」と。彼は縮こまった声で、

「兄貴、去年のハロウィンに婚約相手を亡くしちゃって。まあそれも事故で亡くしちゃったんですよ。

それで毎年のようにハロウィンイベントやってたんですけどやっぱり去年だけ部屋に篭ってて、ある日突然。今年はその婚約相手を喜んで迎えようとしているんです」

彼もそれなりの理由があったとは。

白装束Aはおばけだぞー!と言う。

続けて我々も言う。

町々の人々が一斉に外へ出始めた。

なんだと思っていると、向こう側で撮影が始まっている。女性アナウンサーが何かを話している。

おや、どうやら見覚えがある。あのアナウンサー。

私はまたあの占い師を浮かべる。

そういえば言っていた。

"久しぶりの再会がある"と!!

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