第2話

 庭には大きな木々があり、わたしは十分に、世界のありようを垣間見た思いだ。あらゆる小説を読み、特に、フロベール、そしてそれを、わたし自身のものにするのに、あまり時間はかからなかった。わたしは特に、フランス文学をたしなみ、それが、わたしの彼女にわたしと付き合うプライドを持たせた。おそらく、わたしは、恋愛というものを知らなかったし、無償の愛情も知らなかった。何かいい副作用があるものだけを取り入れていた。それは彼女にも伝わるし、二人が、とつとつと話していると、彼女の内側にある、愛情と、また、憎悪をかぎ分けた。わたしたちはある意味で殺人の才能があるようなものだ。それでも、わたしは、心地のよさを選んでいたし、彼女も、裕福な家庭で培われた余裕さが、十全に伝わるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る