第4話 死因笑いすぎ
「雨、よく降るなぁ」
廊下で窓の外を見ながら友人と話す。
「梅雨だからな」
「おい、もっと面白いことを言え」
「無茶振りするな」
軽くコツンと叩かれる。
暗い空を見上げると、薄雲の部分に薄っすらと太陽の存在を感じた。
「太陽の存在を観測」
「諦めろん」
梅雨は嫌だな。気持ちも滅入る。暑いし、湿気は強いし。
「雨は嫌いでは無い。梅雨が嫌いなだけだ」
ため息が出る。
「うむ。よくわからん」
スマホを見ている友人は素気ない。なにを見ているのかと思って覗いてみたら、アプリゲームのデイリーをしているだけだった。
雨の日は校舎の窓も締め切っているから、音が独特に響いて少し面白い。
そこに、隣の教室内からいつもの笑い声が聞こえてきた。
「おっ。今日は壁なし。窓閉じ切り。いつもより大きく聞こえております」
ゲームをポチポチしながら友人がのたまう。
「なんだよそれ。お前はソムリエか」
「調子は上々であるようです」
「まぁ確かに。いつも元気で大変よろしい」
「お前のいつもの感想の方がおかしいだろ」
いつも通り、聞こえてくる笑い声はすぐには止まらない。
「死ぬっ、笑いすぎて死んでしまうっ、ひぃー」
姿は見えないけれど、今日も彼女は楽しそうだった。
「死因笑いすぎは嫌だな。そんな友達を持つのは、わたしも嫌だよ」
誰かの感想も聞こえてきた。彼女の友達だろう。
なんだか笑ってしまった。
「どうした?楽しそうだな」
友人の声を聞きながら見上げた空には、雲間から天使の梯子が見えていた。
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