第3話 認知した
「うぉっ」
近距離からの鼓膜を貫通するかのような笑い声。止まらない声。
自分の教室へ向かい廊下を歩いていたところ、すれ違った女子数名の中心辺りから音響兵器が放たれた。
嘘。
そんな不快な音ではない。
隣の友人が笑う。
「いつものあの笑い声、あの子なんだな」
「あー」
少し着崩した制服に明るい色の髪。細かいことは分からないけど、おしゃれな雰囲気の女子がいた。
笑いが止められないのか、苦しそうに笑い続けている。
「もー、倉橋。わたしゃ恥ずかしいよ」
「ひーひー、だって、ひぃ、止まらないんだよ」
もうだめ、死ぬぅ、と言いながら笑いが続いている。
こっち来なさい、と彼女の隣の子が自分たちの教室に引っ張り込む。
それでも開いたままの扉を通って、笑い声は続いていた。
「楽しそうでなにより」
「だからなんだよその感想」
友人の言葉を聴きながら、なんかこっちまでつられてしまって笑いそうになる。
あれだな、箸が転がってもおかしい年頃ってやつだな。うん、この感想は年寄り臭いな。
どこかの誰かの笑い声が、あの子の笑い声だと認知した。
それからは笑い声が聞こえてくる度に、あの子が笑っているのだなと顔が浮かぶようになった。
連想記憶ってやつだな。うん、違うか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます