私の母も、オールドファッションが好きでした。
『強くなったのは、一人になっても生きられるようにするためで、決して一人になりたいからではなかった』
この言葉が世相を象徴しているかのようで、とても痛いです。
みな、未来のために現在を投資し、気づけば大切なものをぼろぼろと零し、乾ききってしまう。
その様が、涙すら枯らしてオールドファッションを食べる姿に重なり、それはもう切ないというような言葉では到底足りない。
そしてそんな乾いたイメージと対になる水底の世界。
水のイメージは、濡れてしまった、取り返しがつかないというイメージを喚起するとともに、浄化のメタファーでもあります。
誰かに拾われることも、ひとつの救済なのかもしれません。
しかしそれが望めないのであれば、水底で息をしながら言葉で世界を紡いだ先に、再生の兆しがあることを、私は、祈ってやみません。