第3話
「…………。愛し合っていないでしょう。僕は、君を愛すどころか知りもしないし」
「疑ってる」
「……。疑うも何も、まず信じてない。君はそれで僕から金銭でも巻き上げる気ですか。まあ、僕くらいの歳は“そういうの”に集られやすいのかもしれないけど」
「証拠。あるよ、先生」
「は?」
正直なところ、僕も人間らしく、焦ると普段より多くの言葉を喋る傾向があることを理解しているつもりだった。だったけどまさか、そう出るとは。
「先生、酔っていたけどちゃんとできました」
埃無き世界で光に当てられた、ミルク成分の少ないミルクティーのような髪色をした彼女が、僕をはっきりと見つめる。
「昨日も結婚式だったのは憶えてる?」
『昨日も』という言い方には多少引っ掛かりがあったが、先を急ぎ、ああ、と。
彼女がその式の参列者かどうかは定かでなかったため、誰のと言うことを避けた。念の為、警戒はしておくべきだ。
「二次会があって」
そこで、ああ、と。今度は心の中で思った。
彼女はベッドサイドに足を下ろし、シーツを羽織ったまま歩いて回り、僕の目の前へ。
彼女を見上げながら後退る。反射的にだ。身体が何かを訴えている。それを見つめてにんまりと嬉しそうな微笑みを見せた彼女を見て確信した。
「先生、もう、少し酔っていたので、弱いお酒を強いお酒にすり替えて渡しました。それだけでぐずぐずになっちゃう先生、すごい可愛かったです」
「は……?」
濃くなる影から逃れるように、額に手を寄せる。
「で、此処に連れ込んで、いただきました。先生を」
「僕がいただかれたの。僕が君を、ではなく」
「はい!それはもう美味しく、お「言わなくていい」
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