第6話

少し、考えてから1人でその店を後にして、出口で立ち止まる。




夏の終わりを迎えた外の世界の夕方は涼しい風で私を迎えた。




夏が終わったら、忘れよう。


たったの5分とその後の数時間でこの世界を変えられたことなんて忘れよう。




「あー…もう。お見合い面倒だな……」




「……」


視線を感じた。



共にガサ、と、ビニール袋がその風に触れられたような音が耳に入って何気なく、視線をその方へ向けたのだそれで。





記憶より先に瞬きすることを忘れてしまった。






だって、今私が出てきた同じカフェのテラス席、ゴミ箱からゴミ袋を回収し取り替えていたのは紛れもなく『彼』だった。





ガサ、と。また音が繰り返される。今度は聞こえなかったけれどその代わりに、例の詐欺男の誤魔化したような澄ました横顔が目に入って業務は続けられて。



意味が、わからない。





「な、え?」





取り敢えず喉から絞り出した第一声はそれだった。





けど奴は、若干面倒くさそうにも見えるような屈めた背の戻し方をして私を視界に入れて、小さくにこりと笑って一礼を。




まさか、こんなところで二度と会わないつもりだったバカ女と鉢合わせるとは思ってもみなかったのだろう。私もそうだよふざけんな。




「……ありがとうございました」




大袋を持ち上げて何事もなかったかのように立ち去ろうと背を向けかける奴に、「ちょっとまって」と声をかける。




ありがとうございました?ふざけんな、50万?


50万のこと?




その前に騙した、こと――。





「謝って…」




私を騙したその口から一言でもそういう言葉が聞けたら、もう、それだけでいいと思った。






「は?何で」

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