第4話
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「で?」
行きつけのカフェ。
大学からの友人がストローの抜け殻を握り潰して、恐い顔で促した。
あれから、二週間。
たった二週間というべきなのかそれとも二週間もというべきなのかわからないけれど、確かに時間は流れていて、その間彼と会ったのはあの後に待ち合わせて会った一回だけ。
そしてもう、会うことはない。
「詐欺だったよ。電話番号とか住所とか勤務先とか、全部嘘。騙されたの。明らかな嘘も、本当だと思い込んで…盲目だったから。あの人、おばあちゃん子って言ってて。もう長くなくて、孫が選んでつれてくるお嫁さん楽しみにしていて、って。私もおばあちゃん子だから」
「君の気持ちが今自分にあるならなるべく早く、小さくてもいいから結婚式をあげたい、けど無理はしなくていい。結婚式じゃなくてもいい、って?」
「うん」
生気のない笑みを口元に浮かべながら、もう何分も触れられていない、水滴が浮かぶ目の前のコップを虚に見つめた。
私も、いくら箱入りで俗に世間知らずだといわれても24。一度も彼氏がいたことないことは気にしてはいたけど、まさか両親にお見合いを進められるとは思っていなくて。
だったら、全部を両親に決められるんじゃなくて、少しくらい自分でって元々反抗心の滲む無謀な参加だったから。
「そんなこと言われたら、挨拶もする。けど妥協しないで結婚式も急いであげたいって思っちゃったんだよね。ま、私が悪いんだけどさ。催促されてなかったわけだし。自分の稼いだお金、結婚資金として50万、それくらいでよかったよ――。あー、ほんとバカ」
この秘め事は、目の前の彼女にしか話していないから両親も知らないし、自分のお金だったし、両親が選んでくれた人と大人しくお見合いするべきだったっていう忠告だったわけで。
ただ少し、情けないだけ。
心が痛いだけ。
一瞬の出来事だっただけ。
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