第2話

「前髪短めなのも可愛い。お似合いです。零れ落ち「そうだ…羽のない天使って羽もげて血まみれってことですか?フフ」





遮ろうと、必死だったのだ。


が、私は昔歌を習っていた為声が力強かった。




故に、辺りは静まりかえった。知らず知らずの内に。





「……」




声、大き過ぎたかな。視線が頬辺りに突き刺さるけど皆どうしたんだろう。



あっ。


今いい感じだった1人目の人に狂った女を見る目を逸らされた…?




静かにそっと向き直ると、時が止まったような中、一人だけの肩が小刻みに震えている。





樫月てめぇ…ッッ!!!





待って。人の所為にしちゃいけないっておばあちゃんが言っていた。


今のは狂った女が悪い。




真っ青になってすぐ、今度は真っ赤になってモジモジし出した私の目の前から男の噴き出す声。



「ッ、あはははは!血まみれ…想像力たっか…」



「……」





この人、褒め上手ね。





そういえばさっきから褒められてばかりだとショックすぎてクールダウンした頭がふと気が付いた。



真顔で、ひとを褒める能力って大事と頷く。



頷いて、初めて持った興味。



事前に配布されていたプロフィールに目を通すと、彼は24歳だと記されていてまさかの同い年が判明。哀しいけれど子どもっぽいと言われる私より若く見える。




衝撃的すぎた第一印象から目まぐるしく解放されて初めてちゃんと彼を見てみると、目の前でまだ幼く見える笑顔が輝いていて眩しかった。



歯並びいいなー…。



どちらかというと暖色に近い、紅茶多めのミルクティーみたいな髪色。まるで白いスーツを進んで好むようなきれいな髪だけど。



何で七三分け?



彼の笑いが静まる頃、これは突っ込んだ方がいいのだろうかと考えた。ら、彼の方から前髪に触れた。




「前髪が気になりますか。そうですよね。今日気合い入れてセットお願いしたら昨日の寝不足が堪えて眠ってしまって。目を覚ました時には完成されていたのです。この昭和感漂う前髪。いいでしょう。あ、あげませんよ」



「……。ブフッ」


「どうぞ笑ってください。けど電車の中とかめちゃくちゃ恥ずかしかったです。こういう時に限って車内ガラガラに空いていて席空きまくっているのにわざわざずっと外向いて立ち続けるくらいには、そう。恥ずかしかった」


「何分間立ちっ放しで?」



「74分間」




なんだそれ……。

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