第4話

「なに?」


座ったまま問い返されて黙っていると、彼は立ち上がってコチラへ歩みを進めてきた。


そうしてわたしへと近付いて――恐らく首筋につけているであろう香水のあまいあまい香りにくすぐられるくらい近づいて――背を屈め、耳元で、呟かれ、


た。

「なに、して欲し?」



わたしは気付かなかった。今既にこの場で一番この状況なに?めんどくせぇえと思っているのは冒頭から登場していらっしゃるナンパ男であるということに。


それで、だから、香りに酔ったわたしはそれを微塵も表に出さないで、けど、言った。




「結、婚、してください」





「きっも」



ガツンと頭に激痛が走った。ううん比喩表現じゃないよ?比喩表現じゃなくてね?物理的に。


うん、そう、物理的に今、多分蹴られたか殴られたか小突かれたか頭突きされたかしたわ。

多分多分、最後のが正解、かな。

いってぇ!


「いたい!!」


「てっめぇきっっめぇんだよ!!クソが!!表出ろ表!!!!」



ナンパ男は、いなくなっていた。



代わりに、ストロベリー・キュート・テンプレートヤンキーちゃんが降臨されていた。




…十年前だったらきっと殴り返してた。












ヤンキーとヤンキーと(ミルキー)

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