第2話

「この世界にはいません」




――……寒さで視界が滲む。ああ寒い。寒い。サムイ……。


見上げた先のスノボーマンが「は?」と怪訝そうな表情をしたのが映った。


ここは、スキー場。


今の時点でそういう、「は?」とか女の子についつい(かは知らないけど)零し返しちゃう時点で、この男は零点だな。



あーあ、きもちわ、じゃなくてサムイ、寒い。寒い寒い寒い。



「恋人が?この世界にはいないの?えー?」


サムくて、めんどうくさいな。


むーと唇を引き結んでいると、アハハ可愛い~などと声が降ってきた。


んー、今のはちょっとナイス点かも。



「ご飯行かない?」


何でタメ口?


「っていうか飲み行かない?朝まで飲もーよ」


朝まで?絶…対、ヤダ。


「さっき一度断りましたよね」


「うん。いやーおねぇさん可愛いからさー戻ってきちゃった」



「……わたしのタイプは、髪が透けるような日だまり色に染まっていて、耳があいていて三白眼で、一見して怖いんだけど…雨の日に子犬を拾ってあげるような、そういう男の人」



瞬間的な間の後、「あーこの世界にいないって、映画とかドラマとかにゆめミちゃってるってこと?」と返っていてイラっとしてまった。



あーあ。めんどくさい。どこかにいないかなーー。わたし、みたいに?〝ゆめ”、〝ミちゃって”る人ーーーー。






「……呼んだ?」

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