第3話

「!」


青江くんは、疑い深く見つめるあたしの方を振り返った。

一々照れているのもかなり可愛い。



多分、これであってる……!



「…ごめん。寒いから…手繋ごうと思ったんだけど…」


青江くんは、マフラーを介してゆっくりとあたしを見下ろし、言った。



「…いや、違う。俺が…繋ぎたくて…っ」




「っ!」


来たー!これ、絶対デレだ!!

あたしは心の中でひとり、転げまわって悶える。


だってもう、可愛過ぎる!



あたしはもう一度、ちゃんと手を握りなおす。


青江くんは、恥ずかしそうにはにかんだ。




「青江くんの手、大きいなあ。あたしも手、大きい方なのに」


あたしはこの、青江くんの大きいのにいつも綺麗な手が好き。

大切そうにあたしの手を握る、男のひとの手。



「…俺。美紀の手、いつも優しくてあったかくて、好きだよ」


青江くんは素でそう言ってから笑った。



「…っ!!」



や、やばい…。

今のはズバンと来た。


この人、普段は意識しちゃうと絶対“好き”とか言わない、言えない人だから余計に…。



「ありがとう」

嬉しくて、下を向きながら呟くように言った。







――…流石に冬なだけあって、帰る頃には周囲も薄暗くなる。



「……」

「……」


あたし達は、無言で人気のない道を歩く。



無言なのに、なんだか暖かい気持ちでいる。

青江くんには、そういう、人に無言を辛くさせない雰囲気があると思う。



あたしは、青江くんのそういうところが好きになった。




ブーブーー

「「!?」」


いきなり鳴った携帯のバイブに、ふたりして肩を上げる。



「あ!ごめん、あたしだ」

あたしはそう言って、片手でポケットに入れた携帯を取り出す。



まあ、青江くん、携帯持ってないからあたししかないんだけどね…。



そして開いて今来たメールを見た。



「あ、鞠子から…」

鞠子というのは、あたしの親友。



『to美紀

美紀!青江くんとキスしたの!?一緒に帰ってるなら、今しかないんだからね、チャンスは!』




「ぶっ!!」


「…?」

あたしがふきだしたのを見て、青江くんは驚いた顔であたしを見た。



ああ、今日鞠子にお昼の時、青江くんとまだキスしてないって話したら、なんか怒ってたからだ…。


なんだこの大量の汗マーク。

なんで鞠子が焦ってるんだろう。

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