第2話

「青江くん、ごめん待った?」



「ううん、へーき」



季節は、冬。

青江くんは昇降口で、あたし、美紀を待っていた。



「…鼻、赤い。ごめんね、寒かったよね」


「い、いや、へーき」



あたしが覗き込んで青江くんの鼻に手を伸ばそうとすると、すぐに顔を逸らしてしまう。

ついでに頬が紅くなったのも発見。


「…っ」


ああ!可愛すぎる!


あたしがいつもその仕草にきゅんとしていることなんて知らずに、青江くんは「帰ろっか」と微笑む。


「うん」

あたしもそれに、幸せ一杯微笑み返す。



が、歩き出してすぐ、あたしは青江くんの背中に頭をぶつけた。


「…?」



「青江くん、どうしたの?」

あたしは彼の後姿に問いかける。



「っ!」


青江くんは振り返って、それから顔を真っ赤にして驚いたような顔をした。



「え!?」

な、何!?

あたしもつられて驚いた顔になる。



「……あー…」


彼は、今度は恥ずかしそうに口鼻を隠そうと手を持って行く。



これ、青江くんの照れたときの癖。



彼の焦げ茶で綺麗な目が揺れている。



これはなにかある…。

なんだろう、探せ、あたし!


目だけをきょろきょろと動かすと、彼の腰辺りに位置した右手が、少しだけあたしの方に向けて差し出されていることに気付いた。



も、もしかして……。



息をついたあたしはキュ、と青江くんの綺麗な手の端を握ってみた。

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